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「Free!ES」第12話!絵コンテ・演出/山田尚子を堪能する!! その2

昨夜、放送された Free! ES 第12話
満を持して我らが山田尚子登場!!
 
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というわけで早速今回の演出、映像をいろいろ分析してみましたw

本当は待ってました!といいたいところなんですが、「今回は使われないのかなあ」と諦めていたところだったので、自分には不意打ちで、正直、こんな最後の最後になって演出に投入されるとは思ってませんでした(予告とか雑誌とかチェックしないでみているので…つか今週プライベートでいろいろあったので、全然覚えてなかったw)
山田尚子ファンにとっては「たまこラブストーリー」以来の最新作というわけですが、でまあ感想としては
うん。やっぱり山田尚子さんは一味違うわ!w
そしてまたイギリス連邦ネタか!w

いやあ、今回も現地でロケハンやったんでしょうなあ…TVシリーズの1話のためにオーストラリアロケハンとか、京アニが「Free!」に賭けてる気合がわかるというものです。これはやっぱり劇場版で全国大会だな!来週の最終回の後で、映画化発表だな!(3月のイベントの後という可能性もあるがw)
※追記(0921) なんでもEDの舞台はオーストラリアらしいです。ということは放送前にロケハンに行ったわけで…でも、12話の展開が放送前から決められていたとは考えにくい…いや、最初に山田さんがこの回をやると決まっていて、山田さんもロケハンについていって構想を練ってたってことかな? その辺は想像するしかありませんね
 
という前置きはこんくらいで

まずはこれまでの物語の流れをおさらいするところから(見ている人はわかっていると思うんですが)
全国大会を前に、才能はあっても将来の夢が見つけられず、周囲の期待や願いにがんじがらめにされてもがく遙は、とうとう最大の理解者であった真琴とも喧嘩してしまう。その遙を、凛がオーストラリアに連れて行くと言い出した。果たしてどうなる?というところで今回の話になります
まあ…そういう引きなら、素直にドラマツルギーとして、「遙が旅行先で夢を見つける」という話になるのは確定だよねw

つまり今回のエピソードは、内容的には予定調和というか予測の簡単な回だっただけに、演出面に力を入れて見せるものにする必要があった、ということがわかります。遙の心理が遷移して夢を見つけるに至る、それに演出が説得力をもたせる必要があったわけです。そういうデリケートな回の演出、絵コンテに山田尚子が起用されるところに、改めて山田尚子という演出家、映像家が「ここぞというときの切り札」として使われていことを実感します
 
では、実際に作中でどういう演出、映像が使われたのかを見て行きましょう!
なお、今回の記事は、当ブログの常連さんというより、「Free!」のファンの方に読まれる前提で、細かく説明するように記述しますのであしからずw なお「その2」とありますが、「その1」は第一期の担当回の記事ですw
 
■ 演出!

遙と凛が多くのシーンで対比的に描かれている、というのは見たまんまわかると思います
自分が印象的だったのは、Aパートの最後のシーンでした。食卓から写真をみる遙。写真の中の中学生の凛は夢を追ってオーストラリアに渡り、それは笑顔にあふれている。この回、遙はプールで夢を見つけたシーンで、初めて同じように笑い、一粒の涙を流す。こういった演出の繊細さはさすがに女性演出家だと思います
また、遙の影が鳶になるシーンと遙の涙で、ようやくOPに仕組まれた最後の伏線が回収されましたw

それはさておいて、この記事ではもう少しマニアックというか、ぱっと見ではわかりにくい「仕掛け」を見ていこうと思います

(1)「橋」論に基づくアプローチ
 
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はい。まずは「橋」です。またか!そうまたです
「たまこラブストーリー」の解析で触れたように、山田尚子さんは「けいおん!」でも「たまラブ」でも、「橋」という場所を物語の重要な舞台装置として使っています。それについては過去の記事(これとか)を参照してください

かいつまんで言うと、「橋」は「ふたつの世界をつなぐもの」である故に、そこから展開して、物語や作劇において、昔から象徴的な寓意を与えられてきました。「世界が広がる」とか「人生の転換点」だとか「異世界、新世界との境界」だとか、またそういったことを象徴する「人と出会う、別れる場」であるとか…そういうことを暗喩する舞台装置なわけです

「映画けいおん!」では、唯たちが橋の上を駆けて行くところで終わります。これは、彼女たちが高校時代を卒業して、次の世界に向かって行くことを象徴しているわけです。「たまこラブストーリー」では飛び石の橋の上でもち蔵からたまこへ告白が行われます。ふたりは卒業という次のステージにいくその途中で、人生の転換点を迎えているわけです
そんなわけで、作中に「橋」が登場したら、そういうことを意識してみるべきです

では今回の「Free!ES」ではどうだったでしょう?
そう、シドニーの象徴的な橋、「ハーバーブリッジ」が出てきましたね!
これは作中3度出てきます
この橋、4度出てました!
(すいません1点見落としてて、やっとそれで謎が解けました!)

最初はシドニーを訪れた遙が電車から窓の外に見ます(上のカット)。2度目は、ホテルで夜を明かすシーンに出てきます。そして3度目は駅の看板。そして最後のシーン、遙と凛は橋の袂にいます
この大きな橋をわざわざ見せるのは、(この街で)遙が(大きな)人生の転換点にいる、ということを象徴しているのでしょう

2番目のシーンは、時間の遷移を描いていますが、夜から朝へ、というのは遙の心理が前向きになっていくことの象徴のように思われます
  
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この夜明けは、の人生にとっての「夜明け」の象徴なんだろうと思います

で、(今まで見落としてたw)3番目のシーン。それはこれ!
 
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 「CENT」の方に気を取られてて、何か意味があるのかな?ってずっと悩んでた!w

CENTはCENTRAL(中央)の意味ですから、「今、遙は橋の中央にいる」という意味に解釈するのが自然でしょう!(というわけで説が補強されたw すっげー細かいですが、このシーンは重要。見落としてたのは赤っ恥ですね。駅の看板に情報を仕込むのは、「たまこラブストーリー」でもやってたのにw)
 
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最後のシーンでは
ふたりはこの橋を渡っていますこれは、遙が次の世界に進んだ、ということを、この橋の存在が象徴してるといえます。そして事実、ここで遙は凛に、自分も夢を見つけたことを告白して、それがこの回のラストシーンになっているのです

というわけで、山田さんは今回も「橋」を象徴的な舞台装置として使っていると指摘することが出来ます

【補足(09/21)】
 
GoogleMAPで確認してみました(最初からそうしろw)。ハーバーブリッジ、渡ってますw
 
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遙がバスから見たカーヒル・エクスプレスウェイからの眺め
 
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ラストシーンはキリビリ・アヴェニューから。カーヒルEWの側からは渡っています
 
(2)足並みの変化が描くもの

「けいおん!」以来、山田尚子の映像といえば足元のショットが印象的です
今回のエピソードでも、歩いて行く凛と遙の足元が度々登場するのですが、そのたびにふたりの距離と、歩行のリズムが変わっていくことに気づきます。順をおってみていくと
 
 1)最初、シドニー空港についたふたりの足元が出ます。スタスタ歩いていく凛の後ろを、遙が小さいストライドで急ぎ気味に、だいぶ離れてついていきます
 
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 2)その後、バスを降りたふたりの足元は止まっています。浜辺で、裸足の凛の足元が出ます。その足跡が波に消されます。ちなみにその間、遙はしゃがみこんで歩きません。回想を語りながら、凛は遙の脇に腰をおろしています
 
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 3)夜、ラッセルとローリーに送られたふたりがホテルに入るシーン。じゃあいくぞ、という凛の足を、遙の足がゆっくりとついていきます
 
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 4)電車を降りてホームを駆けるふたりの足元。同じストライドで、同じ早さで、凛の後を遙がついていきます
 
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 5)アクアティックセンターの最寄駅のシーンの前。電車を降りるふたりの足元。同じリズムです
 
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というわけで、最初は凛についていくことに必死で、浜辺ではしゃがみこんだりもしていた遙が、凛と時間を過ごすうち、いつしか凛と同じスピードできっちり着いて行くように変わっていることがわかります。さらにこの後

 6)プールサイドで、遙の足元がアップになり、こちらに向かって前に歩き出しますこの後のシーンで、作中、初めて遙が凛の前を歩いています。これは凛がベッドで遙に言った「お前には俺の行く先を行っていてくれないと困る」に応えている、ということになるわけです
 
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 7)そして遙の足元がジャンプ台に登り、更にその後のカットでジャンプを構える足元が映ります
 
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というわけで、実は足元ショットをつなげてみるだけで、遙が凛に引っ張られ、やがて自発的に自分が進む道を水泳に見つけるまでの変化を象徴的に描き切っているということに気づきます

これが山田尚子という演出家なんですよ!
どうですか!怖いでしょ!www

 
【補足】

凛の回想シーン。中学時代の凛が立ち止まっている足元もアップされています。かつての凛が夢の国に来て、夢の前で立ち止まっていた、ということを示すとともに、今の遙との対比を狙ったものだろうと思います
 
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立ちすくんでいたかつての凛。今の遙との対比でしょう
 
(3)数字の謎 「エイトボール」か?

今回最大の謎は、おそらく気がついたけど気持ち悪いなくらいに思われている「数字」だと思います
そう、Bパートで沢山数字が出てきましたよね。きっと意味はありそうだけど、よく分からない?この数字の群れ…

「映画けいおん!」で、登場した数字には意味がありました
例えば、ロンドン旅行で5人が泊まった部屋の号数は「417号室」でした。それに先立ってヒースローでの入国審査のシーンで、梓に年齢を名乗る「I am seventeen(17)」というセリフを言わせています。ここで梓と「17」という数字は関連付けられていたので、この部屋の号数「417」は、「4」と「17」に分解することが出来、そこからこれは4人の先輩たちと、梓の関係を象徴する数字であり、この旅行が両者の関係性に関わるものであり、それを描いていることがわかるわけです

そんなわけで、山田さんは今回もきっと数字には意味をもたせている!と確信に近い予測ができるわけです
では今回のエピソードはどう見ればいいんでしょうか?

主に数字はBパートに出てきます。細かく見ていくと、登場する数字は範囲は1~19、25、640です
以下に登場順に羅列してみます
 
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023_20140918142905a5c.jpg 024_20140918142907413.jpg
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ぶっちゃけ、これをただ漫然と見ても、その意図や目的は、はっきりいってよくわかりませんよねw
で、以下は自分の推測ですが…

ひとつ気になるシーンがAパートにありました
察しのいい方はわかると思いますが、「ビリヤード台」です
 
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なんでこんなところにビリヤード台が?オーストラリア人の国民的娯楽なのか? 確かにオーストラリアではポピュラーなゲームです。しかしそれにしても家に置くほどかい!と、違和感は否めません
この違和感。わたし気になります! そもそも、ビリヤードの球にも数字がありますよね?

このビリヤードの球、すでに正三角形に並べられていますが、よくみると一辺が5つの球で並べられていることがわかります。これは「エイトボール」というゲームの様式です。これは2人で対戦するゲームで、使う球は「1~15」。一方は「1~7」(ローボール)、もう一方は「9~15」(ハイボール)を持ち球として、それぞれ自分の持ち球を突き落として行き、最後に「8」の球を先に落としたほうが勝ち、というゲームです。ただし、「8」を落とすためには、その前に自分の持ち球を全て落とさなければいけません

自分は、登場する数字は、この「エイトボール」と関係していると考えています
フィルムを追って細かく説明するのは大変なので、箇条書きにすると、実はこうなっています

 ・作中「8」が登場するのはただ一度、ホテルのフロントのシーンだけ
 ・この「8」が登場するシーンの以前には、ローボールの「1」~「7」は登場しきっていない(「1」と「2」が出ていない)
 ・この「8」が登場するシーンの以前には、ハイボールは「11」「12」が出てこない(「12」は2だけ見切れている)
 
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「8」が出てくる唯一のカット
 
 ・「8」が登場したシーンの直後に、ハイボールの「9」~「15」は、「15」以外が全て出てくる
 
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このシーンは凛のカットをはさみ、上のシーンの直後。ハイのうち「15」だけが隠されている

 ・「8」が
登場するシーンの後に、ローボールの「1」~「7」は全て出てくる(最後の数字「7」はプールで出る
 
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プールサイドのシーンでローボール最後の「7」が登場している

こうしてみると、登場する数字はエイトボールで双方が落とした球と見立てることができ、数字の登場は、エイトボールを決めることができるまでの流れになってるのではないかこの話は凛と遙が最後の答えに辿り着くまでのゲームをしているのではないか、と推察できます

それにそってみていくと、まず、唯一、「8」が出たシーンまでには、ハイボールの数字もローボールの数字も出揃っていません。つまりこの「8」はまだ落とせない球ということになります。チャラです

ですがその直後のカットで、ハイボールの数字は1度に15以外が全て出揃います。
一度に揃うハイボールは自分の進路をすでに決めている凛の側なのでしょう。それはこのシーンが、凛がフロントの人に絡んでいるシーンでもあることにも合致します
すると自ずと、ローボールは遙の側ということになります

遙と凛がプールサイドに立ち、ジャンプ台が見えるシーンで、ローボールのナンバーは全て出揃います。
ローボールの側は、今度こそ、あとは「8」を落とすだけ、になるわけです


つまり頻繁に登場する数字は、遙の思索の混迷をビリヤードのゲームのもどかしさ、難しさに例えたのだろうと考えられます。ローボールがプールサイドで全て揃うのは、遙が最後のショットを撃つ要件に辿りつけた=水泳の道に進むという答えを見つけ、決断をするところまで辿り着いた、という象徴だと解釈することが出来るわけです

ただ、「15」が出てこないのがイマイチ自分でも釈然としてません。ふたりでゲームをしているなら、15も出てくる=凛も準備ができている、という方が収まりいいと思うんですが、これは凛の望むように、遙が凛の先をゆくから、ということなのかもしれません

というのが、自分の解釈なのですが、どうでしょう?

また、これはおいといて、部屋の号数「25」には絶対意味があると思うんですよね…こっちが皆目わかってませんw

【補足】

実は、このカットでも「8」が多分見えているはずなのですが、遠景でほとんど確認できません…ノーカンでもいいかとw
 
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奥から2つ目のジャンプ台に「8」ってあるはずなんですけど、多分読めないと思いますw

また、このシーンでは巧妙に(?)凛の身体によって「8」だけが隠されています。この怪しさ決定的(笑)
 
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凛が邪魔になっているという(「9」は凛が動いて見える)。多分、意図的な構図だと思うw

(4)花言葉

「けいおん!」でも「たまこまーけっと」「たまこラブストーリー」でも、登場する花と花言葉は、その場面や人物を象徴する小道具として登場しています
自分は花に詳しくないので、とりあえず目につくふたつの花について指摘します

1)スカシユリ
 
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遙と凛が泊まる25号室に活けられている白百合。これは雄しべの色が黒いことから、スカリユリの品種「ナボナ」であることがわかります。この花言葉は「注目を浴びる」です
この花言葉は、このシーンの凛の語る遙との出会いの回想の内容と全く合致していて、これは遙とその才能を象徴する花言葉といえるでしょう

更に重要な事は、この白百合は、鏡写しになっているということです。鏡写しの白百合は、「注目を浴びる」才能を持つ遙に憧れている凛の象徴であり、また、凛が遙を「俺と同じ世界に行く奴」と語ったように、ふたりが鏡写しのように、同じ種類の人間だということを暗喩しているのでしょう (追記:ベッドで背を向けているふたりと、鏡写しの二輪の花も相似的。またこの後のシーン、電車の中で窓ガラスに映っているふたりが、今度は一緒に同じ方向を見ている、というのは暗示的ですねw)

2)クラスぺディア
 
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ホテルのフロントカウンターにある、黄色い球状の花の植物。これはおそらくクラスペディアというキク科の植物です
シドニーオリンピックのブーケに使われたことで有名になった花なので、まず間違いないでしょう
そしてこの花言葉は「心の扉を叩く」。まさに、遙の心の扉を叩いてる凛、そのものを象徴する花といえるでしょう

というわけで、今回のエピソードでも、花は暗示的なアイテムとして登場していたのでしたw

(5)小ネタ。鳥
 
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鳥ももうこれは定番なのでくどくど書くのもあれですね
鳶が遙の象徴だったり、2羽の鳥が凛と遙の寓意だったりというのはもう見たまんまですw
 
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ラストカットは羽ばたいていく2羽の鳥と、それを見上げる遙と凛。説明不要すね
 
これは余談ですが、ESのOPは山田さんが演出補佐ですが、自分は以前から、OPのうち、冒頭の鳶の影が飛ぶシーンと、最後の歌詞が終わってタイムの数字が出てから終わりまでの流れは、その間の部分となんだか映像の毛色が違うので、このふたつは山田尚子のコンテなんじゃないかなーと勝手に思っていましたw
で、今回、プールで、遙の影がOPと同じ鳶の翼の影になるシーンを見て、やっぱOPの最初と最後のシークエンスは山田尚子だ!と勝手にひとりで得心してたりします。でも実際はどうかしらんw ファンブックとか見るとわかるのかな?
 
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やっぱOPの鳶の影って山田さんの仕込みだったと思うんだよw
 
(6)小ネタ。靴

これは本当に小ネタで、こじつけかもしれないネタw
「映画けいおん!」でのロンドン旅行で、唯は赤いスニーカーを履いていたのですが、これは作中に印象的に登場する赤色と青色、信号機になぞらえて、唯が梓への贈り物を決められず、赤信号=止まれ=足踏みしている象徴と解釈することが出来ました

実は今回、旅行中に遙が履いている靴も赤い靴なのですよ!
これが「赤=止まれ」の意味なら、これは前に進めないでいる遙を象徴するアイテムであり、かつ、「映画けいおん!」を踏襲したお遊びネタ、ということが出来そうです
でもこの解釈、赤い靴を脱いだ遙がプールサイドで自分の夢を見つける、という展開とも見事に噛み合ってたりw
 
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遙の赤い靴。「赤信号」=先に進めないでいることの暗喩か?
 
…考えてみると、第一期の担当回でも、「映画けいおん!」に出した「蘭鋳」を出したりしてたので、これは本当にわざと半分お遊びでやったのかもしれませんw

(7)小ネタ。「9時」

これは本当にこじつけw
アクアティックセンターに行く朝、駅の時計が(午前)9時になるシーンがありました
そういえば、「映画けいおん!」で成田空港に到着したシーンは「(午前)9時」でしたなあ…という、ニヤリとするネタでしたw
 
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9時、好きだなあ…w
 
(8) 噴水→海は物語の縮図?

これはあくまで仮説ですが…
 
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実は初見の時から、噴水での遙のセリフ「勝手にどっかいくな」がひっかかってました
以前同じようなことがあったなと。そう、小学生時代に凛が海外留学を明かした時も、遙は不満だったわけですよ
 
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もし、ふたりが佇んでいた噴水がスイミングクラブという小さな水の世界の暗喩、寓意で、凛が誘った海が、オリンピックという大舞台の暗喩、寓意であるなら、噴水で凛が一度遙の前からいなくなり、凛が遙を海に誘い、自分は大きな海に向かって歩いて行く、というのは、小学生時代からの凛と遙の物語の縮図なのかもしれません

そう考えるのは、「映画けいおん!」でも、自分は泊5日のロンドン旅行とは、唯たち4人と梓の時間差を埋めるために、観念的に高校年間をやり直しているのではないか?と推察したからなんですが…

すると海の前でしゃがみこむ遙と、海に向かって裸足で歩く凛は象徴的であるし、浜辺での凛の裸足の足元(画面手前から奥へ向かう)と、プールサイドで前に歩き始めた遙の裸足の足元(画面奥から手前へ向かう)は対比なのではないか、と指摘できます
 
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という推察w
このへんの演出意図になってくると、確信するのは難しいので、見る側の自由な読解が許されると思いますw

また、風が髪を揺らすのも、この海辺での凛と、プールのジャンプ台に立った遙のシーンとで、対比かもしれません
 
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ちなみに、駅のシーンでも、凛の言葉にハッとした遙の髪が電車の風で揺れます。その直前の凛のセリフは「お前、自分の夢が見つけられねえって言ってたよな。けどもし、それが見つかったら、どうする?」でした。そして遙が羽ばたくシーンでも、髪がなびきます
 
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こうしてみると、どうも、「夢(が見つかる)」ということと「風」には関係がありそうです。作中でふたりが鳥に重ねられ、遙が鳶になぞらえられているように、夢に向かうことを空に舞う鳥に例えているところから、髪が風になびく演出を仕込んでいるのかもしれません

 
■ 映像!

(1)ベタなカメラ配置。抑制的なローアングル


今回は奇をてらったアングルはあまり用いられず、むしろ真正面から、真横から映すような、ベタなカメラ配置が多用されていて、それが全体的に穏やかな印象を与えていました。これは凛と遙が緊張関係になく、凛が遙の「心の扉を叩いている」エピソードである故だろうと思います
すでに広く知られているように、山田尚子といえば小津安二郎ばりのローアングルで有名なのですが、今回のエピソードでは回想シーン以外のローアングルは非常に抑制的でした。 ローアングルは独特の緊張感を生むので、それを避けたのだろうと思います
ぱっと思いつくのは公園で遙が凛を見失うシーンくらいでしょうか。このシーンは 魚眼レンズも使ってうまく不安感を出していました
 
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今回あまりローアングルなかったなと。このシーンは魚眼も使って不安な感じがよく出てました

(2)広角レンズも抑制的。不安を煽る魚眼レンズ

過去の作品で印象的に使われていた広角レンズによる撮影ですが、今回はこれもなんだか抑制的だったような。過去の作品で、山田さんは広角レンズ撮影は学校を舞台に青春っぽさを描くために使っていると述べていましたが…今回は屋外のシーンが多いためですかね? このへんは詳しい方の解説をもらいたいところです
 
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なんかこういう、ただ横から映しただけ、って絵が多かった気が…
 
一方、魚眼レンズが、上記したシーンと、凛の回想シーンで、不安を表現するのに効果的に使われていたのが印象的でした
これは第一期の担当回のイメージシーンでもやっていましたね
 
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でもこういうシーンではしっかり技巧を仕込んでくるw

(3)視線誘導

ローアングルの代わりに目についたのは、カメラ移動による視線誘導でした
小物からキャラクターの顔にカメラが動く、とか、カメラに突然異物が入ってきて焦点がが変わる、とか、ワンカットの中でのライブ感を出していました。例えば冒頭のいちご牛乳から渚の顔への動きとか、3人の手前に鳶が飛び込んでくるとか、のシーンですね。はっとさせられましたw
 
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ここのカメラの移動とか…
 
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このシーンはこの後、鳶にピントが移る。キャラクターの視線も鳶を追う
視聴者の視線、意識が3人→鳶→飛行機と誘導される心地よさw

(4)POV、手ブレ

山田尚子の映像では、よくライブ感を意識した絵作りがされますが、キャラクターのPOVと手ブレは今回も健在!
特に印象的だったのは、回想シーンの凛POVの外人のおじさんが話しかけてくるシーン。それと犬POVのシーンでしたw
これらは映像の中にメリハリをつけていて、いいテンションを作っていたと思います
 
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「Free!」での山田さんの回想シーンはなんか怪奇テイストすなw 今度ホラーやってくださいw
 
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わんわんお!w
 
(5)回想シーンでのフィルムの乱れ、褪せ

今回気になったのは、凛の回想シーンで、映像がフィルムのように乱れる映像です
山田尚子のファンなら、やはり「たまこラブストーリー」での回想シーンがフィルム調に作られていたことを連想しただろうと思います
「たまこラブストーリー」を見た時には、このフィルム調の演出についてその解釈をあれこれと考えたのですが、今回「Free!ES」でも似たような技法が回想シーンで用いられたことで、どうやら回想をフィルム調に描くというのは、山田さんの映像感覚というか、センスの次元でやっていることなのかもと思いました。この表現は古いフィルムの記録映像っぽさを連想させて、「昔の記憶」ということの説得力があったと思います
 
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記憶が古いフィルムに例えられている。これは山田さんのセンスなんでしょう
 
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ピンボケとガウス、中央へのライティングで褪せたフィルムの絵を作っていました
 

とりあえず、一晩で気付いてまとめられた記事はこんなとこです。また気付いたところがあったら加筆していこうと思います。また、「映画けいおん!」「たまこラブストーリー」にも今回にも共通して登場している「列車(電車)」の作為をフォロワーさんが指摘していました。その辺りの解釈は他の方にお願いするとして、この記事ではとりあえず、自分が気づいた今回のエピソードの楽しみ方を紹介してみました

てなわけで
今回も山田尚子さんの演出、映像をたっぷり23分間堪能する内容でした!
大★満★足!w
彼女の次回作が楽しみです!!

 
 
■ 追記

・演出(8)は09/21項目追加

 
 
【 初 稿 】 2014.09.18
【最終更新】 2014.09.21
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テーマ : Free!
ジャンル : アニメ・コミック

「Free!」第7話!絵コンテ・演出/山田尚子を堪能する!!

みなさん見ましたか!
「Free!」第7話!
絵コンテ・演出/山田尚子!
 
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今回はなんか全然、今までと絵の見せ方がちがうなー?と思ってたらこれですよ!

映像の素人の自分でも、初見放送を眺めていて
「なんかこの回、今までと違うな?」と思ったんですけど
スタッフロールをみて超納得&改めて驚嘆ですよ!!
素人目にも違いを感じさせるとかそれだけでもすごくないですか?
演出がめっちゃ濃かった!
情報量がすごかった!
やっぱ山田尚子すげえっすよ!!

でまあ、この記事では我らが「けいおん!」監督・山田尚子の映像を堪能する視点で、自分がどの辺りをみて「ああ、山田尚子やっぱすげー!」ってのを堪能したかというとこをつらつら書いていくわけですが、本当に細かく 見ていったら大変なので、とりあえずこの記事では70点ほどカットを抜いて、ピックアップして紹介していくことにしますw この回をけいおんクラスタ的に(山田尚子フリーク的に?)楽しむ一助になれば幸いですw


ところで、「映画けいおん!」からこの方、山田さんが絵コンテ、演出ともに担当された作品って、「たまこまーけっと」の第1話だけじゃないのかな?というわけで、本当に久々の山田監督―Free!は監督じゃないけど…けいおんクラスタ的には常に監督なんだよ!―のコンテ、演出を23分間、文字通り堪能できる回でした

あ、ちなみにもちろんホモ水泳「Free!」は毎回楽しくみてますよ?
BLとか801とか大好きなんで全然おっけーっすよ!

でまあ、ぼちぼちみていきます

まず印象的だったのはPOV(Point of View:ある人物の見ている風景)で視聴者を引き込むテクニック
例えばアバンでの場面

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渚がプールサイドの江に話しかけると、切り替わって渚視点のPOVで江と真琴を見上げるカットになる
これによって、視聴者の心理をキャラクターに寄せて作中に引き込むわけですよね。この小技はこの回、色んな所で使われてます。Bパートのこことかも

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凛を探す遙、またこの後の去っていく遙を見る真琴のカットが、それぞれのPOVになってましたね

で、やはりAパートでの凛の夢のシーンはさすが細やかな演出と情報量でした!w 
もうこの一連のシーンは細かく見ていくと大変なんで、大雑把に行きますが…
 
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水平線を傾け、魚眼レンズを使うことで不安定で非現実的な絵を作っているわけですが、それだけでなく、撮影さんの光の入れ方といい、この夢の絵は陰影を強調していて、不安感を与える絵作りになっています。なぜこの夢のシーンが不安感を煽っているかというと、それは夢の内容が凛の父親の死と関連してるからなのですが…それは見ていくとわかるようになってます
 
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で、金魚がでてくる。本作で金魚が死を意味するイコンであることは過去の回で語られている通りです。これでこの夢が益々死の影を強くするわけですね。またこの金魚の姿が金魚鉢によって歪んで見えるのも不安感を煽ります

ちなみにこの金魚、背びれがないので蘭鋳です。twitterからしつこくいってますがこれは蘭鋳です山田監督つながりの小ネタですよ小ネタ!映画けいおんネタですよ!わかってますか皆さん!w
(ところで、この直前の金魚鉢がひとつぽつんとおいてあるシーンとか映画っぽくていかにも山田尚子って感じしませんか!)

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そしてここ! この演出すげー!って思いますよね!w
死の金魚が益々強調される。しかもそれらが無数に、遙と対峙する凛の足元にまとわりつく。凛が死に囚われていることがわかる、実に象徴的なショットです。山田尚子がいかに繊細な感性でこのシーンを作っているか!

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あとこのシーン、「フリー」という遙の口元がアップになるところも不快感を与えられますよね。心をザラッと触られる感じ。この不快感はそのまま、フリーにこだわる遙への凛の不快感なんだろうなと思ったり…

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で、プールから父親を追いかけていくわけですが、左のカットもまたすごく象徴的で、凛は明るい海を背に手前に走ってきてV字に折れ曲がり、父親は山のトンネルへと向かっていく。この画面を左右対称に切ったような手前に突き出してくる極端なV字も、視聴者に不快感と不安感を与えます。そもそも消失点がふたつあり、現実にはありえない光景なので、異様な印象を与えるのは当然です。さらに画面がぐらーっと傾いていく。これでもかってくらい不安にしてきますw
ちなみに、このトンネルというのもまた「死」を意味するイコンでしょう。民俗学的にも、古来、洞窟とか山の穴は死の世界との淡い(境界)と考えられたものだからです。トンネルの中へかけていく死んだ父親、その脇にも金魚鉢と金魚、反対側には道祖神かあるいは慰霊碑?のような小さな祠がある。さらに電信柱には黄色と黒の警告色。これらも死や不安感を意味する記号です。恐怖映像か!という…つか、何なのこの情報量w
で、トンネルを抜けると、案の定、そこは父親の死を弔う葬列で、この夢が死のイメージとつながっていることがはっきりするわけです

で、このトンネルを明かりへとかけていく父親の姿というのは、この後のBパート、凛が似鳥に自分の父親について話すシーンで「非常口」のカットがワンカット挿入される理由なんですね。ふたつを重ねているわけです

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これ。山田尚子の演出ってこれですよこれ!w
凝り過ぎだろう! もうホント見てて面白い、面白すぎます!w

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そして最後にこれ。これはもう山田尚子というよりは内海監督の意図が知りたいところ
小さいころの凛はなんと言っていたのか?、それはこの後のエピソードで語られるんでしょうね
こういう妄想的なシーンはたしか「CLANNAD」の担当回でもやっていたと思うので、ぜひとも見比べてみたいところです

でもって、いつもの山田尚子の、対象物を左右どっちかに寄せるロングショットは健在。例えばここ
 
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彼女の絵は多くの場面で神経質なほど「奥行き」をみせることにこだわっているのですが(それはこの回でも意識してみていればほとんどのシーンがそうであることがわかると思います)、場面全体の状況を見せるシーンでは、こういう平面的なFIX(カメラ固定)構図をポンっと好んで入れます。それがメリハリを生んでるんですね

一方いつもの、FIXで画面手前に物体や人物を置いて奥行きをみせるという手法もいっぱい使ってます。例えばここ
 
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手前の凛、中央の似鳥、後列の椅子と、ぱっと見でも3つのレイヤーがある奥行きのある絵だとわかりますよね
ちなみにこのシーンはFIX、フォーカスはずっと似鳥に固定で、手前の凛はピンボケしててろくに顔も映らないけど、画面内で一番大きく動くw こういうのも彼女の演出だよなあとか

ところでこの回、シリアス回だけあって場面切り替えにワイプを使ってません。その代わり…
 
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左のようなオーバーラップ(ディゾルブ)や、水の泡を使っての画面切り替えをやっていたのが印象的でした
特にAで2度使ってるオーバーラップはけいおん!などではあんまり記憶になかったなあ…でも、遙サイドと凛サイドをオーバーラップでつなげて描いていることで、Aパートの流れがスムーズになってたと思います

あと、「けいおん!」で山田監督は、「感情を出すシーンでは好んで横顔を使うのが癖」と言ってましたが、今回も横顔多かったですね。ここではあえて遙、凛を引用せず、怜くんw
 
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なぜ怜を引用したかというと深い意味はないんですが、ちゃんとメガネのつるを描いてるなあと、くだらないことが気になったのでw だってほら、和ちゃんはメガネのつるなかったじゃん? でもほら、つるあってもこうしてちゃんとやれるじゃん?とかけいおんクラスタ的に思ってみたりしただけw

あと、感情を描くということではもうひとつ「けいおん!」では多用されていた足元カットふたつw
 
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左は似鳥くんの足が落ち着かなく動くのが印象的。右のカットは歩くシーンですが、真横でなく斜め上から見せてたので、「あれ?真横じゃないよ?絵コンテ誰?」と思いました…山田さんだったとはw

ところでこの回、斜め上から見下ろすように一同を見せる、ハイアングルのカットが多かったですね。「けいおん!」では小津安二郎ばりのローアングルが印象的だったのですが…例えばBの待ち合わせ場所での一同
 
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こうしたハイアングルからのショットはローアングルが対象を力強く見せるのと逆に、対象を矮小化するとされていますが…
どういう効果を狙ってこうしていたんでしょうね? 腐女子が彼らを愛でるため?w

じゃあ反対に、山田尚子お得意のローアングルのカットもふたつほど拾ってみてみましょうw

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左は対峙する遙と凛を見上げる絵、これもうカメラを床に置いてますよ!床に!w 超ローアングル!
ローアングルは対象を威圧的に、強く、凛々しく見せる効果があるとされるので、これはもう最高度に緊張感を高めるための演出といえますね
また右は、プールサイドの縁の影?から撮影してます。これまたすごいローアングルw ここも緊張感を狙ったものと言えそうです

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他にも、真琴と待ち合わせている遙をローアングルで見せていたりして。対決前の気合の入っている雰囲気が伝わります
というわけで、ローアングルはこの回もさり気なく効果的に使ってます

また、映画けいおん!でさんざん出てきた、画面中の文字、映像情報の暗喩を使ったマニアックなギミックも健在でした

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おみくじ。フォーカスしてるのは待ち人来るですが、他の項目「旅行 楽しみ多い思いでとなる」は夏合宿のことでしょうし、「願事 他人の助けにより望み事叶う」は、第8話以降の展開を暗喩するものであるように思われますが、如何にw
 

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怜がリレーに興味を示す直前のシーンに挿入される鳥のカット。4羽の海鳥が列をなして飛んで行く。これはリレーする4人になぞらえたものでしょう。鳥に登場人物を暗喩させる演出は「けいおん!!」s2e20や「映画けいおん!」でも印象的に使われました。これはもうお約束って感じですねw
 
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でもって花。「けいおん!」でも「たまこま」でも花言葉にはそのシーンを象徴する暗喩がありました
これは凛の墓参りのシーンの直前に入るワンカットですが、きっとこの花言葉にも意味があるはず! でもこの花ちょっとわからんのですよねw 野菊であれば「障害」ということになりますが―遙の存在がそうなのか、それとも、父親の死にこだわることが、凛の障害なのか…?(追記/0828:コメントで水仙という指摘がありました。確かに葉っぱがそうかも。水仙なら「うぬぼれ」「自己愛」「エゴイズム」などが花言葉。この対決は凛のエゴ…ということならストーリーにも合致する!?)

こうした細かいギミックで深読みさせる(というかさり気なく情報を仕込んでいる)のも、山田さんの映像の持ち味でしょう

また、自販機での凛と似鳥のやりとりの場面は、セミロングとアップの起伏の激しさとテンポが見ていて小気味良いものがありました

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凛が視聴者に(似鳥に)向けてPOCKET SWEATの缶を放り投げるという演出でおどかしておいてから…
 
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ロングで入って、いきなり凛の手元アップにぱっと切り替わる。そのままジュースを飲む凛の口元へカメラが動いて…

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応答をする似鳥に切り替えてから、少し寄ってセミロング…

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でもってまた突然手元にアップ。で、父のイメージ回想はいって、父の死を語る前段に上の非常口のカットからまたイメージシーンに入って、今の場面に戻ってくる。この会話の場面は、ヘタするとすごく退屈な絵になってしまいそうなのに、手元を映すショットをパシパシ入れるカメラワークとリズムのせいで飽きずに見れました

この一連のシーンのポイントは凛の手元で、上の足元カット同様に、このシーンではアップになる凛の手元、その缶の扱いにこそ、彼の感情が描かれているといえるでしょう

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つまり大げさに言えば、この一連のシーンを象徴している主役は缶であって、この缶が重要なアイテムであることは最初に放り投げるシーンで提示されてるんですね
このシーンを振り返って見なおしてみると、そのことがはっきりわかる
こういう仕掛けが凄いなあと素直に思います

さて、この回のメインテーマ。遙vs凛の扱い
このふたりについては、決前は、おそらく意識的に、対照的なカットを平等に入れまくってます。全部取り上げるの大変なんで、例を挙げると
 
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こことか…

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ここなど。つまり対決前はふたりを対等に撮影している
それが対決で勝敗が決着すると、立ち位置の高低が変わり、カメラの映像もローアングルとハイアングルに変わります

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こうなって

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こうなると
決着後にふたりの立ち位置を変えることで、それまでふたりを対照的・対等に撮影していたカメラも、勝敗でアングルを変えるわけですね
これは陳腐でわかりやすい演出ですが、こういうのをストレートにやられると小気味いいですw

また、こうして対決後にふたりが正対し、イマジナリーラインを形成することは、次の映像演出で重要な意味を持ちます

で、個人的に注目すべきは一連の競技場のシーン!
この競技場のシークエンスは実にカメラの存在を強く感じさせる作りになってます!
ここからは、カメラの位置を意識しながら見ていくべきです!
 
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まず最初。カメラはハイアングルで競技場を見下ろす場所岩鳶側スタンド最後列?)にあり、遥たちに寄って行きます

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ハイアングルで寄って、彼らのところに来たカメラは、水平に彼らを写します(右のカットは、上記した奥行きのない横からのロングショットの典型例ですねw)。つまり、カメラは彼らの場所にやってきたわけです。で、ここから先生の一連の会話と、そのためのカメラワークを挟んで…

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真琴たちがプールサイドを見下ろす視線に合わせて、今度はカメラはプールサイドをハイアングル(彼らのPOV)で見せます。すると次の場面では

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真琴たちの視線に導かれるようにしてカメラはとうとうプールサイドまで降りてきて、真琴たちを見上げて撮影します。その後、内海監督の要望を満たしつつ(笑)、カメラは真琴たちのスタンドとプールサイドを行ったり来たりするようになります

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そして、競技シーンから決着までは、ほぼ遙を応援する真琴たちのいる岩鳶側からプールと競技の様子を映しています

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こんな感じに。例外はターンですれ違うシーンの凛のPOVの遙を除けばワンカット。遙が劣勢になってきたときの、遙、凛舐め岩鳶スタンドのカットだけです

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このカットにすごく異質なものを感じたなら、多分その感覚は正しい。なぜなら、この一連の対決シーンで唯一このカメラだけが、遙を鮫柄側から撮影しているからです(見返してみてください。他は上記した凛のPOVを除いて、ずーっと岩鳶側から泳ぐ様子を映してます)
そしてこのアングルこそ、内容と同じく敗北の伏線でもあります…というのは

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やがて凛が勝利すると

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今度はプールサイドの上空、ローアングルから鮫柄学園スタンドを映し、似鳥にアップで寄ると…

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ここで初めて、鮫柄学園側スタンドから見下ろすようにプールを見せます
つまり、カメラは鮫柄学園スタンドに移動したのです

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そして勝敗がついた後、カメラは、凛、遙が作るイマジナリーラインの左側(鮫柄側=勝利側、遙の左側)に置かれて、もう岩鳶側からは映しません

つまりこの一連の場面は、岩鳶側スタンド上段→岩鳶メンバーのいるところ→プールサイドに降り→試合中プールを主に岩鳶側から撮影し→試合後には鮫柄側スタンドの応援団のいるところへ上がる、というカメラの移動経緯がイメージできます。遙と凛の対決の最初から終わりまでを、競技場の上空からV字に接近、移動して撮影したわけです。それだけでなく、それまで主人公の遙のいる岩鳶側にあったカメラが、ドラマが作るふたりの勝敗によって、遙と凛が作るイマジナリーラインをまたいで勝者の凛側に移動しているのです

どうすか、カメラの存在感すげえ!って思いません!?
つか、山田尚子やっぱすげえ!!w
やはり山田さんは、アニメの映像感覚でなく、実写映像の感覚でコンテを切ってるんじゃないでしょうかね

あと、対決シーンもいろいろ映像演出が細かった
 
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ここでも魚眼レンズ出てきた! でもこの後の、ふたりが飛び込むシーンは普通のレンズで映してます。ということは、ここでの魚眼レンズの使用は、意図的な映像演出ってことですよね?
意図を推察すると、多分、ただ横に並んでいるのでは対決のニュアンスが伝わりにくいので、このカットではふたりの向いているベクトルを交差させる、いわゆる閉じた空間」の絵が欲しくて魚眼を使ったんだと思います
それによって緊張感を作ろうとしたわけです

また、飛び込む寸前のフォーカス移動!
 
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最初は奥の凛の躰にフォーカスしていて、ふたりが前傾姿勢をとるにつれて、焦点が手前の遙に移動する
この臨場感はしびれました! さすが山田尚子w
「映画けいおん!」でもフォーカスの移動は多用してましたよねえ。オルドゲートイースト駅のシーンとかw 焦点の移動で奥行きを意識させるっていうのも、彼女の映像ではよく出てくる気がします

そしてやっぱり

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でましたハンドカメラによる手ブレ撮影! まさにここ一番での山田尚子の十八番w
競技中、ここともうワンカット(記事のちょっと上にあるカットですが)、手ブレ撮影が入ってます
いうまでもなく、これも臨場感を出すための映像演出でしょう

でもって最後はこれ

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ぐにゃーw

うわあ。こんなベッタベタな演出を!w いやでもありです!あり!w


……というわけで

ざっと「Free!」第7話の山田尚子の映像・演出テクニックを、自分が気づいたところをとりあえずかいつまんで紹介してみました。細かく見ていけばまだまだあるし、きっと気づいてないものも未だあると思うんですが、いやもう、ホント23分たっぷり山田尚子の映像を堪能した!って感じの一話でした!
つか、何度見返しても飽きない!!w

この1話を見返す充足感というのは、「映画けいおん!」を映画館で何度も見返していた時の興奮に近しいものがありますw アニメ演出で、たった23分にこれほどの見どころを詰め込める演出家・映像家ってそうそういないのでは…というか、最初に言ったように、この第7話はそれまでの6話とは本当に全く映像のレベルというか質が違った。そう感じさせるものがありました

「Free!」は内海監督以下、山田監督のもと、「けいおん!」で育ったスタッフが中心になって作っているわけですが、やっぱり山田尚子というのはまだまだ格が違うというか、京アニの中でも異才といっていいんじゃないか?とファンの贔屓目込みで思いますw

つーわけで、この1話は
何度も見返す価値があると思いますよ!
絵コンテ欲しいです!w



■ 追記 (0825)

海外の反応系サイトでこの回の外国人の反応を翻訳していました
演出の秀逸さを指摘している声がやはりありましたw

テーマ : Free!
ジャンル : アニメ・コミック

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