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【たまこラブストーリー】 読解メモ 02 追補

引き続き。02に現在の考察を追補します

もちろん、ネタバレが入っているメモなので、視聴前の方は見ないように

まとまったものになるかはまだこれからで、雑記です


【STOP&GO】
読解メモ02で、飛び石やミシン&カメラはフィルムになぞらえたものだ、という指摘をしたわけですが、もっと広義に捉えて、「流れを段階として認識する」つまり「停止と移動の繰り返し=ストップ&ゴー」とすると、飛び石の他にも、フィルムと等式でとらえられる要素が出てきます

・階段:面から面への移動、ということでは飛び石と同じ。作中では例えば…
 1)かんなが進路を話してる場面で階段に座っている
 2)またその後のたまこが階段をのぼる足元が映る(その階段の上にタンポポがある!)
 3)自己嫌悪しているみどりとたまこが階段を下っていく
 4)京都駅。たまこは階段をかけあげる
 他にも鴨川デルタや体育館の出入口、たまこが告白を友人たちに相談するシーンなどはそうですね

・「だるまさんがころんだ」:ストップ&ゴーの遊び
 1)進路を話し合ってるシーンの中でかんな、たまこ、みどりが遊んでいる。まさにフィルムと同じ

おそらく意識してみていけばまだまだ出てくるはずです
と、考えていくと…

【デジタルとアナログ】
更に広義に解釈すれば、フィルム然り階段然り、「STOP&GO」はアナログな事象のデジタル化です(連なっているものを細分化し数値化するのがデジタル化)。とすると、この作品では、アナログとデジタルの対比が行われている可能性が指摘できます
そもそも「たまこまーけっと」からして、伝統と革新性、古式のものと現代のもの、という対比が作中にたくさん散りばめられていました。「たまこラブストーリー」においても、そういったコンセプトが踏襲されている可能性は当然、考えられるでしょう

作中に出てくるものを、今、思いつく限りで、アナログとデジタルで分類してみます

(アナログ)
・時の流れ(アナログ時計)
・つきたての餅の塊
・糸電話
・カセットテープ
・レコード
・黒電話
・手紙
・エスカレーター
・新幹線全体
・記憶(回想)

(デジタル)
・時刻
・ひとつひとつに丸められた餅(餅の数)
・携帯電話(スマホ)
・デジカメ(映像ファイル)
・フィルム(のコマ)
・携帯メール
・飛び石
・ミシン
・階段
・新幹線の車両
・記憶(回想)
・数字

作品が一方を肯定し一方を否定している、とも限らないわけで、このふたつを対立概念と考えるのは拙速だろうと思います
ただ興味深いことがいくつかあります

 1)「心」はアナログによって伝わっている(糸電話、カセットテープ。これは作中でも、うさ湯の前で携帯使えというあんこに対してもち蔵の「糸電話は心と心をつなぐ…」というシーンがあります)

 2)記憶(回想)に「フィルム調=デジタル」のものと「ノーマル調のもの=アナログ」がある

 3)さまざまな「数字」が作中頻繁にでてくるが、これはもしかして単にデジタルを意識させたいだけなのではないか?

1)と2)で整合性が取れればエウレカといいたいところですが、どうもそういう感じでもありません。回想シーンに2種類の表現方法がある理由については、まだ考察が必要です

3)も仮説ですが、実はそれぞれの数字にそんな具体的な意味は無い、という可能性も考慮する必要があると思いました

【人生すなわちこれフィルム…?】

要するに何がいいたいかというと、この作品がひたすら「事象のデジタル化(またはフィルム化かもしれない)」ということを無意識に意識させようとしている、少なくともそういうアプローチが認められる、ということです

「事象のデジタル化(またはフィルム化)」ということにどういう意味、理由を込めているのか、までは想像する他ないですが、前回の記事でも少し触れましたが、やはり今一瞬の価値を真摯に確認すること、その今の積み重ねが未来に続くこと、を訴えているのだろう…と推察しています

以下は適当に項目の追補

【TVシリーズの共通設定】
TVシリーズから変わらない設定は、映画化の構想がなかった時点からの設定流用ですから、そこにわざわざ新しく寓意が込められている、とは考えにくい(もちろん、利用した可能性はあるし、監督の中ではそういうことを抜きに最初からある認識だった可能性もある)ので、その辺は今後多少考慮をする必要があると思いました。例えばもち蔵の部屋にある「123」や「星のウィンドウシェード」なんかはTVシリーズと同じです

【さくらんぼ】
TVシリーズ設定資料集から、お玉もったたまこが呆けている左側にある手前の木は「桜」であることが確定。よって作中時期(4~5月)を踏まえてあの赤い実は「さくらんぼ」です。花言葉はふたつ連なっている実であることから「小さな恋人(たち)」

※追記)桜の手前にある低木ではないか、というご指摘をうけました。いわれてみるとそうかも…? 明日、映画館でまた確認してみます

【機関車】
火星に向かうはずの機関車が輪っかのレールをぐるぐる回っているのは、大人の男になれないでいるもち蔵の寓意ということでいいと思います

【たまこの部屋の置物】
設定資料集を参照して一点訂正。黒猫の置物ではなく、クマだそうですw まあ、木彫のクマには魔除けという意味合いもあるそうなんですが…自分にはあれどう見てもクマというより黒猫なんですが…もう一度よく映画を見てみることにしますw


とりあえず、今のところは以上

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テーマ : たまこラブストーリー
ジャンル : アニメ・コミック

【たまこラブストーリー】 読解メモ 02

今日は2回観劇してきました。今日の気付きなど

もちろん、ネタバレが入っているメモなので、視聴前の方は見ないように

まとまったものになるかはまだこれからで、雑記です


【タンポポ】
作中にタンポポが登場するシーンは以下

1)橋でたまこたち4人が進路を語り合うシーン
2)1)から商店街に帰る道すがら
 シークエンスとしては、
 橋の上で史織の話→石階段でかんなの話→1)「4輪のタンポポ(花)」→駅で史織と別れる→橋の脇の道でみどりの話→だるまさんがころんだ→階段をのぼるたまこの階段の上の脇に2)「5(6?)輪のタンポポ(花)」→橋→商店街ゲート前

 1)はそのままたまこ、みどり、かんな、史織の4人であり、花言葉「別れ」か(本来、「別れ」は綿毛の花言葉ですが、「別れの予兆」という意味と思われ)

 2)はさらにもち蔵が加わっているのかも?まだなんとも

3)体育館でたまこがみどりに、もち蔵に告白されたことを告白するシーン
 3輪のタンポポ(花)に、たまこ「もち蔵、東京の大学行くんだって」のセリフがかぶる
 3輪はそのまま、たまこ、もち蔵、みどりで、彼らの「別れ」またはそれぞれ「思わせぶり(たまこ)」「別れ(もち蔵)」「真心の愛(みどり)」ということなのかも

4)フェステイバルの演技が終了した時
 2輪のタンポポの花。1輪が綿花で、そこから綿毛が6?つ空へと飛んで行く。彼女たちの「別れ」か? 綿毛の数また数えますw

5)教室でみどりがたまこにもち蔵の転校を告げたシーン
 3つの綿毛が空に飛んで行く。たまこ、もち蔵、みどりの3人の別れ。もちろんこれはみどりの嘘なので「イメージ」

6)たまこが去った後、場面乱れて1つの綿毛
 5)を踏まえて、1つの綿毛=みどりだけが本当の「別れ」だったということ。みどりのたまこへの懸想の「別れ」

7)ラストシーン。並んだ2輪のタンポポ
 たまこともち蔵。「真心の愛」でしょう

なお、たまこが最初に花屋でもらうのはタンポポではありませんでした
フォロワーさんによると第一話と同じピンポンマムだそうで、「高潔」「君を愛す」の花言葉があるようです

【二輪挿し】
普段、たまこの母親に備えている花は一輪挿しだが、もち蔵の告白を受けてなにも手につかなくなったたまこが、豆大に休みを言い渡されたその次のカットで二輪挿しが映る

たまこもひなこ(母親)同様に「お休み」ということでしょう。(その裏付けとして、たまこが母親の歌を聞いて復活した後に化粧鏡のコップが映るシーンがないか観察していましたが、今のところ、どうもないように思われます)

なお、この二輪挿しの花はキク科の花と思われますが、これが特定できて花言葉がわかると、また読解がひとつ進むと思います

【直角】
最初の方。体育館に入ってきたかんなは、自分のカバンとバトンケースを直角に置いてます。彼女は直角大好きw

【たまこの部屋にあるひょうたんと黒ネコの置物とシーサーとこけし】
これは記録まで。シーサーは1体ですが、本来は対のものではない(本土の狛犬の影響で2つセットされるようになった)ので1体でもおかしくはありません

 ひょうたんは縁起物。健康と幸福をもたらします
 黒猫は地域によって悪運を祓うとされています
 シーサーは魔除け
 こけしは身代わり

つまりこれらはすべてたまこの幸福を願って置かれているものですね
それ以上の意味は今のところ保留

【月に和装美人、扇子】
上記の置物のところに飾られている絵ですが、意味がよくわかりませんw
保留

【もち蔵の部屋にある地球儀、ロボット】
ロボットの意味はわかりませんが、地球儀はこの映画においては地球と月の関係がたまこともち蔵の初期設定に例えられることから(前回の記事の通り、最後にもち蔵は火星に、たまこは金星に例えられる)、地球儀はたまこに重ねられるんでしょうね
ロボットはよくわかりませんw

【回想シーン/フィルム調とノーマル】
回想シーンにはフィルム調のものと、ノーマル調のものがあります

1)冒頭のモノローグ。幼少期からの回想(フィルム調)
 もち蔵とたまこを共に客観しています

2)昔、もち蔵が飛び石からたまこを突き落としたシーン(ノーマル調)
 もち蔵とたまこを共に客観していますが、一方の記憶であっても違和感はありません

3)たまこの母(ひなこ)の回想(フィルム調)
 前半と後半が切れている可能性があります。
 
前半はたまこまたはもち蔵のPOV
 たまこが映っている後半ははっきりもち蔵のPOVです
 ここで「話しかけてくるお餅」のカットが入りますが、ここでは豆大がしたものであるらしく、この記憶を持っているのはおそらくもち蔵…と思われます(後述)

4)もち蔵に握られた腕の回想(ノーマル調)
 たまこの回想です

5)たまこの記憶にある話しかけてくるお餅のシーン(ノーマル調)
 イメージ。母親を亡くしたたまこがお餅が話しかけてくる記憶を持っています。この時は豆大ですが…(後述)

6)体育館でのたまことみどりの会話での昔のシーン(ノーマル調)
 イメージ。この時は客観的な映像でたまこ、みどりの記憶ともいいかねる

7)たまこの話しかけてくるお餅をもったもち蔵の回想(ノーマル調)
 実はもち蔵でした、という

ちょっと今のところ思い出せるのはこのくらい
この使い分けにどういう意味があるのか、解釈を与えるのはもうちょっと思索を重ねてみます

【話しかけてくるお餅】
というわけで、上記をまとめると、どうも話しかけてくるお餅というネタは
豆大がもち蔵にやり、それをもち蔵がたまこにやったんじゃないかという可能性があります

もちろん、たまこの記憶違いだった、という可能性もあるのですが、それは前項3)のひなこの記憶の回想シーンが、たまこ、もち蔵どちらの主体で行われてるものか、によって変わってきます。あの回想シーンの前半はたまこの可能性もあるので、今のところどちらとも断言しないでおきますw

で、今日最大の気付き

【飛び石=フィルム】

わかりました?
自分はやっとここに来れて愕然としたんですけど

「流れていく時間」を
「断続的な今の連続体」として認識する


それがもち蔵のメンタリティなんだと思います
いや、あるいはそれはこの映画の…山田尚子の哲学なのかもしれない

それは、「今」を「カメラ=写真」の中に封印し、記録して未来に価値を伝えようとする「映画けいおん!」の哲学、思想性のさらに一歩先にある

きっと、だからもち蔵は映画が好きなんだと思います
きっと、だからこの映画はタイムワープやタイムジャンプを多用するんです

「流れていく時間」が「少しづつ変わる無数の今を並べたフィルム」であることを意識させるために
そしてきっとそこには、「今」に対する真摯がある

「だから」この映画で、もち蔵は飛び石の場所で告白する
あの飛び石はフィルムであり、流れていく時間なんでしょう

もち蔵がたまこに告白するのは画面左側(修学院側)から4番目の亀の石の右隣の石の上です
で、その後、もち蔵が「星とピエロ」でマスターに成長を促されます
「後悔は、何かをやった証」だと
だからもう一度あの飛び石を訪れて、もち蔵はさらにその2つ右の石まで飛んでいく=先に進んでいくということなんでしょう

だからあの後、もち蔵は「忘れていい」とたまこに言ったわけですね
だからたまこは、あそこから必死になってもち蔵に追いつく必要があったわけです

恐ろしいですよ。山田尚子監督ほんと恐ろしいw

でですね
と、いうことに気づくと、ラストシーン

【新幹線=カウントダウン】
ということがわかるというw

たまこのもち蔵への告白。背後で新幹線が走っていきます
もち蔵が乗ろうとする車両が7号車。それが動き出して、背後の新幹線が流れていくんですが、それがタイムカウントをしていることがわかる

6、5、4、3、2、1→糸電話持って→暗転、告白

ここでもまるで「映画撮影」であり
出来事が「フィルム」になってるという…
「流れていく時間は、断続的な今の連続体である」と、そう無意識に意識させている

山田尚子監督が「映画ができた」といった本当の意味って、こういうことなのか?
…天才の仕事怖い…怖すぎる…w

ちなみにこの後のEDが「3」「2」「1」で始まりますよね(笑)

【たまこの部屋にあるミシンとカメラ】
たまこの棚に、下から「カメラ」「ミシン」一番上に「赤いポスト」(貯金箱?)の置物があります

カメラは「けいおん!」と同じなら今を記録するツール
そしてミシンは、糸が断続的に現れるもの=フィルムに通じます

このふたつがたまこの部屋にあるということは、上記したような思想性は、もち蔵個人のものというよりは、山田尚子監督の思想性というべきなのかもしれません

これにポストが加わるということは…どこかに伝達するということになるのでしょうか。伝達ツールは糸電話、携帯(スマホ)の他にちょっとまだピンときていないので、解釈を保留しています


というわけで、現時点ではここまで
他にも幾つかチェックしてることがありますが、まだ文章化できません…(黄色いバスとか、革命の年号とか…まあおいおい)

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【たまこラブストーリー】 読解メモ 01 追補

引き続き。01の後、ツイッターでやりとりしていて気づいたことを追補します

もちろん、ネタバレが入っているメモなので、視聴前の方は見ないように

まとまったものになるかはまだこれからで、雑記です


【MARSの件】

フォロワーさんの指摘で、星とピエロに置かれたアルバムの中に、ポール・マッカートニー&ウイングスの「Venus and Mars」があることがわかりました。つまり作中にはMARS(火星)だけではなく、Venus(金星)もあったわけです

これによって氷解してきたことがあります

まずMarsとVenusの組み合わせは、伝統的に男女を寓意していること。これは惑星記号♂(Mars)と♀(Venus)がそのまま男女の記号に転用されていることからよく知られていることです
だとすると、もち蔵が持っている機関車に「FLY-TO MARS LUMBER Co.」と書いてあるのは、豆大との会話にもあったように、もち蔵が少年から「(大人の)男」になる(なろうとしている)、という寓意があると指摘できます。星とピエロから出た後の鴨川の飛び石でのもち蔵が男の顔をしているのも納得です。形而上的な言い方をするなら、もち蔵はMars=男=大人になろうとしているわけです

すると必然的に、Venusはたまこになぞらえられるべきということになります。たまこの側にもおそらく女性性につながる情報がどこかに埋伏されているはずです。(銭湯でのおっぱいやお尻餅のくだりか?w) そして、Venusがはっきりと登場するシーンが有ります。ED「プリンシプル」のラストシーン。あのフィルムはタンポポの綿毛の背景で、空がくれて星空になり、また明ける一昼夜を映していますが、最後に、青空に煌く星が残ります。そう。あれがVenus。明けの明星=金星です

作中、彼女は予告編にもあるシーンですが、星空を前に怯む。「宇宙(=大人)の入口」に立って彼女は怯んでいるわけですが、映画の一番最後に輝く金星がたまこを寓意しているなら、この作品は確かに、宇宙の入口に立ってひるんでいた少女が、宇宙の中に輝く一つの星(金星)になるまでの物語であり、合わせて、少年と少女が男と女になる物語、大人になる物語だということができるでしょう

以上の点は、補完できるように今後の視聴で注意してみたいと思います

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【たまこラブストーリー】 読解メモ 01

ネタバレが入っているメモなので、視聴前の方は見ないように

視聴して気づいたことをつらつらメモがてらまとめているものです
まとまったものになるかはまだこれからですが…

なお、「たまこラブストーリー」の読解、理解にあたっては、「映画けいおん!」の時と同じく、その時リアルタイムの自分の認識を記録がてら残していきます。そして間違いがあれば更新記事で直していって、その当時の間違いはあえて過去の記事に残しておきます
これは後から、作品の理解に至る思考の過程を、記事を読み返すことでトレースできるようにしておくためです。後年まで間違いが残ってるのは恥ずかしいですが、この作品に対する敬意と誠意の表明ということです
今回も頑張ろうw

今回はまず課題の洗い出しということで、気がついたキーワードや情報などをランダムに整理することもなく書き出してみます

【キーワード】

By always thinking unto them.
アイザック・ニュートンの言「いつもそのことばかり考えていただけ」
ニュートンの思想、活動がこの作品を読み解く上での鍵になると思われます
彼の代表的な著書「プリンキピア(Principia:ラテン語)」が、主題歌「プリンシプル」の名づけの理由でもあると思われ。つまりあれは万有引力、引かれ合う力のことを歌ってるw

正確に言うと、彼はその書で運動の法則を示しました。物体を「重心に全質量が集中した、大きさをもたない質点」と定義した上で、すべての物体の運動が物体間に作用する「引かれ合う力」によって影響を受けることを3つの法則にまとめたわけです。作中、かんなが「バランスポイントを、意識していますか?」というセリフをたまこにいってますよね。互いの重心が惹かれ合っている、というのが今回のテーマであるでしょう
まあ、その相互に引かれ合う力が、実は天体にも作用しているよ、というのが彼の言説の画期性だったわけですが(一般にこれが万有引力の法則)、おそらくそれが、この映画が地球と月(つまり天体)の場面から始まる理由なのだろうとわかります。地球と月に作用している引かれ合う力。それが月を地球の周りに「ぐるぐる回らせて」いる…みどりがトイレの前で告白しないもち蔵にいいましたよね。「これからもたまこの周りをぐるぐる回っているだけ」だと。つまり冒頭の地球と月の関係性は、たまこともち蔵の関係性をなぞらえたものなので、月はもち蔵に例えられるのだろうと思います

「物が落ちる」のは万有引力のため。「引かれ合う力」に由来するわけで、この映画においては「物が落ちる」ことはそのまま恋愛に例えられるのかも。冒頭、カウンターの上からりんごが床に落ちるのも。放り投げたバトンが落ちてくるのも。放り投げた糸電話が放物線を描くことも
引かれ合う力、という話だとかんながしていた磁石の話ともつながってきそうですし、もうちょっと深い意図があるかもしれません

すいません、まさか恋愛映画を読み解くのに
物理法則の知識が必要だとは思いませんでしたw
さすが山田尚子!俺たちのできないことをやってみせる!そこにシビれる憧れるゥ!

どうでもいいですが、恋愛関係を天体の運動に例えるのは「ARIA」を思い出させましたねw 相手に惹かれているのは衛星だけではないと、アルくんが言ってましたっけ。これもまさにそういう作品でしたw

りんご
ニュートンが万有引力の法則を発見したきっかけがりんごだというのは俗説ですが、まあニュートンつながりでりんごが出てくると

また、りんごには伝統的にアダムとイブをたぶらかした「禁断の果実」、「知恵の実」という寓意があります
これまで山田監督は、「りんご」を過去に手がけたフィルムに何度も登場させています。「映画けいおん!」のED、「中二病でも恋がしたい!」のED。そして今回の「たまこラブストーリー」。その文脈で見ると、監督は「りんご」に無垢な人を成長(変貌)させる「知恵の実」としての意味を持たせていると推察されます。有り体に言えば、子供を大人にしてしまうもの、知識や体験といった、その要因を「りんご」に寓意させている。「映画けいおん!」のEDでは、ブランコの上にあったりんごを誰かが(唯?)がおそらく食べた。そのことが彼女たちを無垢な白薔薇の園から追い出してしまうのでしょうし、「中二病」のEDでは、りんごが大人への果実だからこそ、中二病でいたい六花は中二病の銃でそれを撃ち砕くのでしょう。そして今回の「たまこラブストーリー」では、あれはやはりたまこやもち蔵を大人へとひとつステップアップさせる知恵の実であって、「恋愛」を象徴するイコンなのだろうと思います。EDであのりんごは巨大になって、ボートの上には巨大なりんごがあったりするわけですが、あれはまさしくもち蔵のたまこへの恋心、愛情そのものだろうと思います。冒頭でも、りんごが棚の上から床に「落ちる」のは先述の通り、彼の恋心が落ちるほどに大きく実った、ということでもあるでしょう
この映画では、りんごは前2作とは逆に、肯定的に扱われている。それは確かにこの映画が恋愛映画であるというスタンスを明示していると思います

あと、もち蔵のPCがMac=Apple社製でしたね。りんごは執拗にこの作中のイコンとしてでているので、まだまだ意味があるだろうと思います。今後も掘り下げてみる方向で

MARS
火星。星とピエロでマスターのカウンターにあるレコードのタイトル。そしてもち蔵の機関車にも「FLY TO MARS LUMBER Co.」の文字がある。2つならば意図は必ずある
赤い星。「赤」がキーカラーなのか。りんごの色。カセットデッキの色。たまこを寓意する風船の色…? 軍神…は関わらなそう。ところで彼にとってあの機関車は火星に向かう銀河鉄道なのか? 映画研究会部室の座席に「艦長」とあったが、あれは確かに松本零士っぽかった(笑)
地球がたまこ、月がもち蔵なら、火星とは…要考察

【数字関係】

もち蔵の部屋 「123」
「123はけいおん!」と言いたくなるところですが(笑) ニュートン絡みでいうと、彼がプリンキピアで提唱した3つの運動法則の暗喩なのかも、とも思います

汽車の模型 「5」
TVシリーズからそうなんですが、あの記者は輪っかになったレールの上をただ「ぐるぐる回る」だけで、あれもその、たまこに対して踏み出せないでいるもち蔵を象徴してるんだろうな、と思います
また上記の通り、あの車両には火星に向かうようなニュアンスがあり、銀河鉄道がイメージされているのかも。そこに「5」という数字がある。でも、火星は第4惑星ですしねえ…
 
映画研究会部室 「32」
入口の扉に32の数字があります。フォロワーさんからの指摘ではこれは華氏32度=氷の溶ける温度のことではないか、とあり、確かに扉には「火の用心」の貼札もあったりしますw
一方で第二法則、第三法則なのかも…ニュートン絡みで特別な数字だったりするのかな? 自分でも、もうちょっと考察してみたいところです
 
映画研究会部室 「route66」
よくある置物だったりしますが…まだ意味の特定は不明

銭湯でたまこが使っているロッカー 「3
第三法則なら作用と反作用の法則のこと。まあ確かに彼女は惹かれると同時に逃げようとしましたけどね…このへんも要考察。今の時点ではメモまで

新幹線 JR京都駅11番線 めばえ22号 7号車両
  「11」「22」「7」
めばえというのは「恋愛の芽生え」という意味でしょうね。もち蔵が乗ろうとしたところは6号車両と7号車両の間の扉。昨日早速言って撮影したりしてきました。これはマジックナンバーというより舞台巡りの参考かなw 

もち蔵のたまこファイル 「14」
14ファイルありました

御霊祭 5/18 「5」「18」
参考まで

上を向いて歩こう 「9」「8」「6」
「上を向いて歩こう」が坂本、作詞が中村大、作曲は永

うーん…わかんねーw

【キーアイテム等】

星空(宇宙)
過去の記事の通り。未来。大人の世界。転じて「不安」のニュアンスが多いように感じられました。星空が出てくるシーンはみんなその人が不安に思っているシーン。告白を考えているもち蔵に星空がフィーチャーしますし、告白されたたまこも星空のもとで怯む。もち蔵の部屋の降りっぱなしのウィンドウシェードは星ですが、告白の後の返事を待っている彼の不安な気持ちを表現しているのでしょうし、
たまこの画像を消そうとするもち蔵のPCの壁紙も星空でした


もち蔵です。後述しますが、そう思って月の空の演出を見ると読み取れることがあります

糸電話
これはもう見たまま。たまこが受け止められないのは、もち蔵からの思いを受け止められないでいるという寓意→最後に受け止められる

バトン
トップ=餅=もち蔵…だったとは!わかんねーよ!w
バランスポイント=もち蔵の重心。真心。これを受け止められないというのも糸電話と同じですね

コンタクト
告白されてなくしてしまう。これをつけてない間はもち蔵をまともに見れない
たまこは、コンタクトの消失(もち蔵からの逃避、混乱)→コンタクトをつける(もち蔵に向かおうとする)→チャイム(自身の恋愛感情の自覚)→カセットテープ(思いを受け止める腹をくくる)→返事、というステップアップがあります

りんご
上記した通り。また幼稚園時代のもち蔵の名札もりんごであり(たまこはチューリップ)、もち蔵が子供の頃からたまこが好きだったことを暗喩している

風船
冒頭の空に舞い上がる無数の風船は、ラストシーンで看板にあり、再現される。ふたりの成長を象徴する演出ともなっている。タイトルシーンでの赤と青の風船はそのまま、たまこともち蔵の寓意か

汽車の模型
上記の通り。TVシリーズよりあり、ぐるぐる回り続け逡巡するもち蔵の寓意か。またMARSへ向かうことが示唆されてもいて、そこにもち蔵が銀河鉄道のような夢を重ねている可能性も。なぜ「5」という数字がそこに重なってくるのかが今のところ疑問です
 
【花ことば】
 
タンポポ
過去の記事で指摘した通り、「別離」「思わせぶり」「神のお告げ」「真実の愛」「愛の神託」とあり、そのシーンごとで花言葉が当てはまるように出ているようです。彼女たちが将来の夢を 語っているシーンの道端にあり、あのへんは「別離」なのかなあとか。タンポポの綿毛は「別離」でしょうし、EDラストシーンの2つ並んでいるのは「真実の愛」なんだろうなとか

マーガレット
映画研究会部室でもち蔵の話す横顔のシーンの背後にあるポスター。またEDに登場する。言うまでもなく本編EDにも登場している。花言葉は
「恋を占う」「心に秘めた愛」「貞節」「誠実」。まあもち蔵(のたまこへの思い)そのものですねw

南天?
告白された後、内庭でお玉もって呆けてるたまこの左側にある。フォロワーさんによると南天とのことですが、まだよくわかりません。南天なら「
機知に富む」「福をなす」「私の愛は増すばかり

つつじ
告白された後、内庭でお玉もって呆けてるたまこの右側にある。「自制心」「節制」「恋の喜び」

黄色い花
S極、N極の会話をしてるシーンに脇にある花。ワンカット抜かれますし、読み解く上での重要な花言葉があると思います

【演出】

ひこうき雲、飛行機の音
史織が将来のことを話した後のシーンのたまこに重なる。また史織がホームステイのことをたまこに告げたシーンの後にたまこにも重なる。解釈上はすなおに「映画けいおん!」を踏襲していいのでは。史織が将来を見据えているということの暗喩、そして先に進めないでいるたまことの対比を狙っているのではと思います
 

月が雨雲に隠される
上記の通り、月はもち蔵の寓意。告白のあとで、月が雨雲に隠されるのはたまこの乱れた心、泣きたい気持ち、隠れたい(隠したい)気持ち、そんなところでしょうか

チャイム
最初の感想の通り、ステージの移り変わりの合図
たまこのもち蔵が好きだという自覚(恋愛)の始まり。みどりのたまこへの恋愛感情の終わり

映画研究会
恋の問題を抱えるもち蔵に二人の友人が話すシーンの背景、壁の文字
犬山「何かできることないか?」 背景の壁に「開かずの間」
桃太郎「いつでも俺たちを頼って欲しい」 背景の壁に「出入口」
でも彼らは結局役に立ったのかというと…? 
ちなみにたまこが訪ねてくる入口には「火の用心」と「32」の数字がありました

♪「上を向いて歩こう」
バトン部がフェスティバルで選ぶ曲が坂本九の「上を向いて歩こう」なわけですが、「幸せは雲の上に/空の上に」と歌う歌ですし、上を向く、という行為が空、そしてその向こうの星空(宇宙)につながっていくわけで、大人に成長していく登場人物へのエールともなっているんだろうなと思いました。劇中によるとあれはバトン部の中で候補曲を出し合って決めたもののようですが、誰が提案したのかはわかりません。もしかしたらどこかにそのヒントはあるのかも? また見てみます

【色、キーカラー】

青、新緑(緑)、黄色
監督が挙げたキーカラーです。新緑の緑は生命力にあふれた萌える木々の色であり、主人公たちの新しいステージを彩る色としてふさわしいといえます。青は青空。やはり登場人物たちを見守る色と言えそうです
問題は黄色ですが、タンポポの花の色。恋の色、ということなのかもしれないと思いました


りんご、カセットデッキ、MARS、3年生の色。小津安二郎の赤?
赤に込められた意味は何かあると思われます

【その他】

犬、パンダ
映画研究会で使っている着ぐるみ。なんで犬とパンダなんだろう? 犬は中の人が犬山くんだからなのかな? パンダに関してはEDでりんごを摘むのがパンダだったりするところからして、もち蔵が自分を投影してるのかなという気もする。だとしたらなぜパンダなのかという…これも課題ということで

劇伴
これは読解とかそういうんじゃないですが、本編の劇伴は新作またはTVシリーズのものを編曲したものを使っていて、多分TVシリーズと全く同じものは、使ってないか、ひとつくらいしか使われなかったんじゃないかと思います
同時上映は別。あっちは逆にTVシリーズと同じものを使っていたと思います

テーマ : たまこラブストーリー
ジャンル : アニメ・コミック

【たまこラブストーリー】 初見感想 『まずは総論みたいなのw』 【感想】

えーと、とうとう公開されました山田尚子監督作品第二弾「たまこラブストーリー」
みなさま見に行かれたでしょうか? 自分は舞台挨拶巡りをして、公開初日の26日にさいたまMOVIXで1回、新宿ピカデリーで2回。翌27日になんばパークスシネマで1回、京都MOVIXで2回の計6回、これまでに見ました

一言で言うと大変いい映画、「いい」作品です
これも大きなくくりとしては10代の生き様を描いた青春映画であり、そのテーマを恋愛に絞ったというその純度が素晴らしいものでした

自分は「映画けいおん!」をみてからこっち、山田監督が恋愛を描いたらどうなるのだろうとずっと妄想(笑)していました。あそこまで見事に成長を描いた「けいおん!」で唯一徹底して省かれていた「男女の恋愛(性愛)」は、彼女ならどう描くのだろう、という思いは自然に芽生えた欲求だったわけです(まあ、自分は「恋愛ラボ」とか彼女にやってほしいなあと思っていたんですけどねw)

果たしてけいおんの次に彼女が描いた「たまこまーけっと」は、以外にも昭和風実写ホームコメディドラマのアニメ化、ともいうべき作品で、少女たちの生活を覗き見ているような生々しい息遣いを感じる映像美などもなく、いってみれば、70年代、80年代風のオーソドックスな、アニメアニメした作品でした。だから「けいおん!」のファンであっても「たまこまーけっと」にはのれなかったという人が多くいたと思います。自分も正直、たまこまーけっとにけいおんほどの強い思い入れは持てませんでした…テーマや描きたいことはわかるんだけど、期待したものとはちょっと違ったかな、的な…(その辺は過去のたまこまーけっと関係の感想を参照のこと)

過去の記事で書きましたが、自分は当時京アニがけいおん!以後オリジナル路線に方向転換するとは思っておらず、この「たまこまーけっと」というオリジナルワールドは、山田尚子という類稀なるクリエイターが描きたいものを描くための汎用ワールドとして作られたのではないか、とすら思っていたわけです(今でもその疑念?は持っています)
で、はたして「たまこラブストーリー」が発表された時、自分は期待したわけです。彼女のための世界で、恋愛ものを作ってくれるなら、その方法論は「たまこまーけっと」と同じでなく、むしろ「けいおん!」のような手法であろうと
その期待は予告CMでもPVでも違わず、
そして公開された映画を見てもそうでした

というわけで…

これから見に行こうと思っている方にいいたいのですが、「たまこラブストーリー」を「たまこまーけっと」と同じだとは思うべきでありません。ぶっちゃけていってしまうと、基本設定が流用されているだけで、その表現技法や人物描写の豊穣さ、隠された寓意の細やかさなどは、「けいおん!」で山田尚子監督が見せたそれであり、ある意味で「映画けいおん!」よりも深く丁寧に作られています

だから「映画けいおん!」で山田尚子の才能に感動した方なら
この作品は決してあなたを裏切らない。それだけは断言します

見に行ってください!
絶対にいい作品です


…と、いうところまでが口上w



というわけで、以下はすでに本作を見た方を前提に感想をつらつら書いていきます



えーと…今回もどこから切り込んだものか悩んでしまいますね。まず直感的に、感覚的な部分の素直な感想からいきます

まあとにかく、これが見たかったんだよ!というか
こういうものを作ってくるだろう、と思っていたものが、確かにこういうものが作られてきた!と思いました
良く言えば「想像通り!」「期待通り!」
悪く言えば「想像通り!」「期待通り!」
良くも悪くも俺が信じた山田尚子監督!www

なんというかですね。上記したように自分の中では『「たまこまーけっと」がああだったから、「たまこラブストーリー」には期待できねーよ」』みたいな感覚は全くなかったわけです。逆に、絶対にこういうものを作ってくると思ってました。俗っぽく言ってしまえば、「映画けいおんで感動したこの俺を感動させてくるものを作ってくるはずだ」という。それはもう完全に最初から確信で、1mgの疑いもありませんでした

むしろ逆に。初見の時は上記したように「期待通り」だったんだけど「期待以上」ではなかったかな、という…もっとも自分の「期待値」が異常に高いっていうのがあるので、あれなんですが(笑) 
でも、それから何度か見返してみると、やっぱり今回も侮りがたいっていうか、侮れないっていうか、ごめんなさい俺舐めてました、的なものをじわじわ感じている、今まさに。そんなところですw

初見の時は、そんなわけで自分はその、見たかったものを見せてもらったなという満足感があって、特に何も感慨とか興奮とかはなかったんですが、2度、3度と見ていると、こう…ラストシーンで泣けてくるんですね

それは何なんだろうと自分で思ってみると、多分これは「けいおん!!」や「映画けいおん!」で感じた時と同じ。山田監督からの、人間賛歌のようなメッセージを「たまこラブストーリー」にも感じたんですよ。人の思いというのはこれほどのドラマなんだという…twitterにも書きましたが「たまこラブストーリー」には、改めて山田尚子というクリエーターの人間愛を感じたわけです。人間くささが大好きで、人間らしさを愛していて、人間こそがもっとも面白いドラマだと信じている人の作るフィルムだと思った。"人間を信じている"んです。それが伝わってくる。自分が泣いたのは、なによりも心を震わせたのは、そのことだったんだと

同時に、自分が、「けいおん!」にしても「たまこ」にしても、日常系という粗雑なくくりや、「なにもない話」という暴論に賛同できないのは、それらの評価は、山田監督がこれほどに「人間描写」に注いでいる情熱や信念を、何一つ受け取れてないと思うからです。日常を描いているからなにもない。退屈だ。というのは、人間というものが持っているドラマをまるで侮っている。そういう暴言なわけですよ。自分はそれには絶対に賛同できない。少なくとも山田尚子の作品を見た今となっては、それは絶対にできません

自分が山田尚子のフィルムが大好きな本当の理由は、とどのつまりそこにあるんだろうなと、改めて自覚させられる映画でした

作品の体裁としては恋愛映画
なんですが、テーマは関係者がいっているように「一歩踏み出す勇気」の話なんですね。勇気の話。でも、自分が受け取ったのは、少年少女が、大人になるために自分の世界を自分で作っていく覚悟の話でした
勇気に求められるのは覚悟なわけで、覚悟という部分に自分がフォーカスしてしまうのはおっさんだからですねw やっぱりその、覚悟した後の振り絞る勇気というのは、もう…それは勇気と言うよりは勢いだったりしちゃったりするので。自分はそこで根性据えるってところを重視したいなと。おっさんだからw

で、そういう視点で見ると、今回の映画は…まあ詳しくは別の記事で書こうと思うのですが、彼女たちは史織を除き(これ重要。ここだけで掘り下げていけば「史織論」が作れるくらい)、みんな誰かに背中を押されている。他者、あるいは地域との関係性の中で支えられて覚悟を決めて、自分の勇気を振り絞っていく
そういう話になってるんですね。自分はそういうところがこの映画はとても優しいと思いました

見る前は正直、もっとシビアな話になると思っていたんですよ。例えば地域と個人が別れる事になるとか、恋愛と夢をどちらか一方を選択を迫られるとか。名画「ニュー・シネマ・パラダイス」で、アルフレードは映画監督を目指すトトに、故郷を出て行く時にいうセリフがある。「ここをでたら帰ってくるな。会いに来るな。ずっと時間が過ぎた後なら、変わらず故郷はお前を迎えてくれる。お前を見たくない。おまえの噂が聞きたい」。これすごい名セリフだと思うんですが。もち蔵とかそういう展開になっちゃうのかなくらいのことを思ってたわけですよ(笑) でも作中ではあれ、豆大さんに「帰ってこいよ」って暖かい言葉をかけられてますよねw

前後しますが、自分はPVまでの段階で、作品への推察(考察?)を積み重ねてきました
でまあ、見終わってみると、大筋の推察はあたっていたなと。そもそもが、大人に向かっていく話であるということ、もち蔵が「映画のために」東京に行く進路を選ぶことだとか(映画が理由であることはPV時点では明かされてなかったけど看破してたw)、タンポポの持つ花言葉の重要性だとか、たまこが糸電話が受け取れないことがもち蔵の思いを受け取れないことの寓意だとか、宇宙が未知の世界、未来の暗喩でそれに怯んでいるのだということだとか。概ねは…先の記事でいったように、それらの推察、洞察が出来たのは、あのキービジュポスターにそれだけの寓意を込めるクリエイターだと自分が信じていたからであり、監督がその期待に応えるクリエイターだったから、ですねw 山田尚子監督が適当にキャッチーなキービジュを描かせるだけの人だったなら、ここまでの洞察は出来なかったでしょう

でも一方で、バトンがもち蔵であることだとかはさすがにわかりませんでした。自分はたまこの夢が絡んでくるのかなと思っていたんですが、彼女の夢は母親のようになること、であって、結局たまこには帰属する家族や商店街と離別するという道はなく、上記したようにむしろそれらは彼女を支える土台であり続け、友人たちは背中を押してくれたわけで。そこは「たまこまーけっと」から揺らがない、あの最終回で打ち出された「個人と地域共同体の絆」というテーマは踏襲されたんだなと思いました
でも、その一方で、もち蔵が地域から出て行く、という部分、そのモチベーションや葛藤はもうちょっと描いて欲しかったなあという不満点もなかったといえば嘘になります。そもそも彼がどうしてそこまで「映画」に情熱を注ぐのか、という動機付けを見たかった、というのはありますね。これは「たまこまーけっと」からのつながりで見ると、どうしても思ってしまう。もっともパンフレットの監督の弁によると、もち蔵が行く東京の大学はオープンキャンパスなのだそうですが…いやちょっとそれはw

内容に踏み込んで、細部の話をしていくと…

まずキャラクター絡み
すべてのキャラクターがみんな良かったんですが、やっぱり突っ込みたくなったのはもち蔵
あのですね、「なかったことに」あれはマズい。女性によってはあれだけで冷めるw 「ここまで悶々とさせておいてなかったことにとかなんじゃてめーは!」っていう女も世の中にはいるからw でも、告白シーンでまっすぐ瞳を据えたまま告白したところとか、マスターに言われて砂糖をやめ、飛び石のところで佇むシーンとか、男の顔してましたね!カッコ良かったぜもち蔵!
だからこそその後の「なかったことに」でがっくり来たんだこのヘタレ!w 返事もらうまでは粘らんかい!w
あと、ラストシーンで、泣くな(笑)
 
たまこ。たまこは自分が見ていてすごく良かったシーンがふたつ
ひとつは告白されて、かたじけねぇから走って家に帰るところのシーン。あの走ってる間の他のことがまるで頭にはいらない、あの演出!すばらしい!さすが!山田監督俺もう一生ついてくよ!そんな感じw
そしてラストの駅のホーム。「待ってよ!」から後のあの表情とセリフ。洲崎綾さんも舞台挨拶で言っていたけど、あのシーンのたまこはホントもち蔵に甘えていて、わがままを言っていて、可愛い女の子って感じでよかった! いやー、たまこって人物がやはり「たまこまーけっと」ではあまりにも描かれすぎなかったんですよねえw あそこのたまこはすごくよかったです

みどりは表情や機微がとても丁寧に描かれていて、やっぱりその、もち蔵、たまこ、かんな、それぞれとの絡みが彼女にとってはそれぞれ意味があって、結局のところ彼女はもち蔵とたまこの関係が進展しなければ、彼女も先に進めなかった。彼女がもち蔵やたまこの背中を後押ししたのは、結局のところ彼女自身が先に進むためにも必要な行為であって、それを彼女がどこまで自覚的にやっていたか、そこはちょっとまだ図りかねるところだけれど、良いポジション。そして切ないポジションでした
あの、たまこと体育館でツーショットで話すシーン。たまこ、それをみどりに相談するか…ってところで見せる彼女の表情が実によかったです。そしてあの校庭のわーっ!は…ていうかこの映画、「映画けいおん!」をすごくオマージュしてるよね(笑)

かんなは、まあいつもマイペース。けいおんでいうとムギポジション。ブレない揺らがない間違えない。そういう感じですが、自分はたまこの告白作戦のところが好きでした。女友達がやるああいうドタバタちょっかい計画は成功しない。これはもう少女漫画の定番。お約束です。お前らはただ友人の恋愛をダシに遊んでるだけだろ!という感じがたまらんw 「家たてて」メールは笑いましたw あと校庭。あの走り方は唯と同じアラレちゃん走りですが、なんともいえず異様な感じがあるのは気のせいですかw でもまあ、真面目な話をすると、一番良かったのは、教室でみどりをみて、「いい表情してますよ」というシーンと、木によじ登れたシーン。特にあの一言はみどりをどれだけ救ったかと思いますね
 
史織。そう、史織さんがこの作品では実は特異点。すごく光ってる。異様に光ってる
上記したように、実は彼女だけは誰からも支援されていない。誰に背中を押され得ることもなく、自分一人で自分の道を決め、自分一人で怯む自分を打ち破ってホームステイを決めてしまうそして挙句の果てには、彼女こそが、あのN極S極のシーンで、たまこの本心を看破して言語化してしまう。「好きなんだ」
何なんだ史織さん!いったいなにがあった!(笑)
…もうですね、彼女に関しては、もともとそういう強さを彼女は持っていたのだ、と理解するしかないですね。そもそも彼女はTVシリーズではたまこに導かれてたまこの友人になったけど、最初からひとりで生きてた人なんですよね。そんな彼女が、支えてくれる友人を得てパワーアップしてしまった。そういうことなんだろうなと
でですね、他にもその、史織さんが絡むシーンって、その直後にひこうき雲と飛行機の音とですねー「映画けいおん!」のオマージュみたいなシーンが2度もあるわけですよ。自分の将来を語るシーンと、留学決めたシーンでしたっけね。史織。絶対特別扱いされてる(笑) ぶっちゃけ史織さんってあなたひとりで「けいおん!」やってませんか(笑)
まあ、彼女に関しては本当に面白いんで、今後、監督へのインタビューでは、彼女への掘り下げをお願いしたいと思いますw
 
とまあ、そんな感じで、キャラクターの一人ひとりに親近感を覚える、密度の高い人物描写がされた映画だったと思います

山田監督の映画には、アニメでなく実写映画を見たような視聴後感があるのですが、自分が思うに多分それは、彼女が人物描写の部分に、実写映画にまさるとも劣らない情報量を注ぎ込んでいるから、だと思うのですよね。これは過去にも度々、ツイートしたり、このサイトの記事にも書いたことではあるのですが
「映画けいおん!」でも思いましたが、彼女はおよそ平時の人間観察というものが半端ない。ものすごく徹底していて、人間がそういう気持ちの時にああいう仕草をする、みたいなことを理解していて、それをロジカルに構築して人間を描写している。自分は彼女はそういうクリエイターだと思っています。そしてそれがまた、自分が彼女を絶賛し、別格に支持する理由でもあるのです
 
続いて、場面での演出の話

ってもうこういうの語り始めたら切りがないんだけどもw
一つ印象的だったのは、チャイムですね
上記したN極S極のシーンで、史織がたまこの本音を看破してしまう。そのシーンにチャイムが重なるじゃないですか。あれは始まりと終わり。たまこのもち蔵への恋の始まりであり、みどりのたまこへの懸想の終わり。2つの意味を持つチャイム。あそこでまた物語がステージをひとつ進める。そういうチャイム。小憎い演出でした
もうね。これだよ!これが山田尚子だよくそw そんな感じw
 
あと、風船のシーン。冒頭の少年少女時代の回想と、ラストの新幹線ホームのシーンの看板の両方に出てくる。「風船が空に飛んで行く」が何を寓意している か、というのは昔からなんともその、適当にそれっぽい解釈をつけることは出来るんですが(「未来に羽ばたいていく」とか、「しがらみから解放され自由にな る」とかの)、これだ!という確信は持てないのがもどかしいところ。「けいおん!」では高雄統子さんが好んで使った演出でしたが、山田監督も影響を受けて のものなのかな、それとも別に元ネタがあってのことなのかなと思ってみたり…正直わからんです(おい)w

というところで…
ここではざっとした感想のつもりでしたから、これ以上書いてくと色々細かくなっていくのでやめときますw
あとは各論的な内容はおいおい別記事にて。いくつかすでに気づいている寓意や、仕掛けもあるので…その辺も「映画けいおん!」の時と同じように、自分の感じたところを指摘していってみたいなと思います
ちなみに前売券は10枚買っているので、あと10回は最低でも見に行きますね!あと舞台挨拶もね!w

まあとにかく、今の自分の気分は山田尚子ワールド Welcome back!って感じでw
これからしばらく、当ブログは「たまこラブストーリー祭り」ということで、映画冒頭にあるように、By always thinking unto them.の精神で行こうと思いますので、よろしくですw

テーマ : たまこラブストーリー
ジャンル : アニメ・コミック

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