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第一期終了時感想

この作品は、そもそもなんで「いい」のかわからなかった。
ただ見ていると、いくら見ていても飽きないし、梓じゃないけどなんとなくいいんだよなあ…という、不思議な作品だった。
「萌えと音楽をあわせたから」?「美少女+音楽が斬新だったから」?「京アニだから」?「ディティールが優れていたから」?「声優・アニメソングブームとリンクしたから」?「潜在的オタクであるミュージシャン層を開拓したから?」etc...
この作品を語る人間の多くがそういう話をしているだろうから、そんな話は他の人に語ってもらうことにする(笑)

でも、それらの話はなぜ、なにがこんなに心を掴むのか、ということとは何かが違う気がする。
少なくとも自分にとっては違った。これまで自分は作品の魅力ということについて、大抵のものについては説明ができる自信があったのだが、この作品についてはわからなかった。
自分は、いったいこの作品のなにがいいのか。

自分は00年ごろから隆盛してきたいわゆる「萌えアニメ」というものがぶっちゃけ嫌いだった(笑)
というか今も嫌いだ。執拗なセックスアピールと媚と内向的な下卑た笑いが生理的にダメだ。
そして萌えキャラクター偏重主義。どれもこれも、キャラ萌えに隷属させられた歪な世界観とキャラの魅力を強調するためだけの矮小なストーリーという共通性を持っていた。自分はこうしたものがどうしても好きにはなれなかったのだ。
そうしたアニメが中心になったこの 10年ほど、アニメに感動する、という体験を数えるほどしかしてこなかった。
もうこんなマンガとアニメしか生まれてこないんだろうなとも半ば諦観していた。
加えてその放送期間の短さは「ハマる」という体験を許さなかった。3ヶ月では同人誌を作る余裕すらない。この10年、アニパロ同人誌は停滞と後退の一途だったのもむべなるかな。
アニメが消耗品になって、ますます自分にとってアニメは感動とは程遠いものになっていた。

30年以上アニメを見てきて、時代を変えてしまう作品は、5-10年を挟んで現れると思う。
SFならば「ヤマト」「ガンダム」そしてややおいて「エヴァ」、キャラクターものなら「うる星やつら」「セーラームーン」という流れがあった。
しかしこの近年は上記したようなアニメの現状もあって細分化が進み、そんなアニメ界を巻き込むようなエポックメーキング的作品が出てくることはもうないんじゃないかと思っていた。
それでもこの16年、自分はこれだと思える作品、ハマれる作品を期待もせずしかし待っていた。

で、この作品を見ていて、「もしかしたら、この作品はそうなのか?」と思った。
でも確信が持てなかった。
いったように、「いい」ことはわかるのだが、「なにがいいのか」わからなかったのだ。でも自分がハマるというのは奇妙だ(笑)
でも、昨日13話を見終わってから考えて、この作品がなんだったのかをなんとなく、自分なりに消化できてきた。

この作品には、従来の多くの萌えアニメとは違う要素があった。
それは奇をてらわないことだ。萌えアニメにありがちなSFでも伝奇でもない。ファンタジーやオタクライフでもない。もちろん漫画としての設定の誇張はあるが、しかしベースはあくまで学園生活、サークル活動という誰でも知っている日常であり、それは00年代というよりは、どちらかというと80年代くらいまでは存在したスポ根ものの切り口に近い。

確かに、これまでも「日常系4コマ」といわれる作品はあった。
でも、その多くはやはりキャラクターを見せる為の偏った世界で、やはりどこにもない世界だった。
そうした「萌えキャラクター偏重主義」は言い方を変えるなら「オタク向けの言語」だ。
オタクに向けた「記号」で構成され、オタクはセンスを理解してニヤリとできるが、それはどこかハメをはずした「共通語ではないもの」で、一般人が見ると引いてしまう。
でも、この作品は一般向けの「共通言語」で書かれていたのだ。

多分、この作品は懐かしくも正道の王道だった。
奇をてらわぬ、誰もがあったと思える世界とキャラの協調、そしてそれが生む空気を見せる。
萌えキャラの為にある世界でもなく、萌えキャラのためにある物語でもない。萌えキャラをただ見せたいのでもない。両者は作品の両輪だった。
描かれていたことは、恥ずかしい言い方をするなら「青春グラフィティ」というやつだ(笑)
考えてみるとそんな言葉があった80年代に、確かにこんな作品を見たような気がした。
あの頃はこんなにポヤポヤとしてない、もっとビシッと気合の入ったものだったが。
しかし確かに、こんな世界に触れた気がする。

こんなことになかなか気がつかなかったのは、「萌えアニメ」からのアプローチでは、よもやそんな作品は生まれないという先入観と決め付けが自分にあったせいだ。
萌えアニメはどこまで行っても「一般向け」へ脱皮することはできず、「オタク村」の中で陰湿にウヒヒ、エヘヘ、ああアレね、やっぱりここはこうでしょウヘヘと語られ、エロ同人誌のネタにされるだけのものだと、自分は見限っていた。
もうそういう風潮に飽きてもいた。
この作品も、確かにそんな旧来の萌えマンガという脈絡から生まれたのに、オタク村に限らず誰でも楽しめる作品だったのだ。それは四コマが原作だったとかそんな理由もあったのかもしれないが。それはそれで語れば長くなるから割愛して。

この「萌えと共通言語の融合」というのは、自分の価値観からすると、これはやはり革新的だったと思う。
それはたまたまこの作品だけの偶然、奇跡だったのか。それとも「やればできる子」だったのか。そこはまだわからないが、本物ならこれはすごいことだし、その路線は多分、今後10年の萌えアニメの方向性を決める、ひとつ違う次元にいったと自分は思う。
でもそんなものじゃないとしても、確かにこれは、自分が長らく見ていない、そして久しく見たい作品だったのは間違いない。

妙な話だけれど、この作品を見て、キャラクターや世界を愛しい、楽しいと思う感覚は、「うる星やつら」の頃に感じていた感覚に似ている(笑)
なんかもう四半世紀も昔のことなので本当に忘れかけていたけれど、確かにあの頃子供の自分はこんな感じであの作品にハマっていた。空気が好きで、キャラが好きで、物語が好きで、なんの翳りもなく、なんの疑いもなく、ただ楽しい、愛しいと思っていた。
考えてみると、あれからずいぶん、ひねたものの見方をするようになっていた(笑)
こういう感覚は本当に久しぶりで、そのことに感動している自分がいる。

でもまあ、それに気づいたときはもう終わりだったんだけど(笑)
でも神というものがいるのなら、この出会いに感謝したい。そんな気分だ(笑)

これで気持ちの全てがすくえた気はまだしないんだけれども、まだどこか違うのか、本質じゃない気がするのだけれども、今はこのくらいしか書けない。


ここからは余談になりますが。

この作品は、公式なんかでも言われていることだけれども、キラキラしてた。
青春のキラキラを良く描き出してた。
こういう「優しい」「温かい」作品はなかなか生まれてこないと思う。
こんな作品がもっと増えればいいのにね。
歌と声の演技を頑張った声優さんたちも素晴らしかったです。ホント感謝。

あと、バンドってものへの興味がちょっと甦りました。
自分はアニソンも洋楽も苦手で、J-POPしか聴かない人なんだけど、自分が深く長くハマった人についてはそれなりにメンバーや音楽の背景についての雑学もありました。
ただ自分の中で「やる側」の視点というか、やる人の気持ちというのはやはり世界が違うというか、思いもよらないもので、自分にとって音楽は、やっぱり音楽に自分を同調するものであって、奏者に視点を向けるものではなかったわけです。
でもこの作品は、自分が耳にしてきたミュージシャンたちの人間像を、そしてその音を、改めて知ってみたいという気持ちにさせてくれました。
だから今は、昔自分がよく聴いたミュージシャンの歌を聴いています。感謝。

大学時代にマンガと音楽という表現手段を比べたときに、音楽っていいなと思った時期はあるのだけれど、それは淡いもので、しかも自分には音楽の方が敷居が高く思えたので、とても実現には踏み切れませんでした。自分が日記で時々好きな音楽を取り上げてるのも、音楽という表現への憧れが強くあるからで、音楽は一番優れた表現だと思ってるからです。
今にして思うと、やっぱり音楽もよかったかな、とも思います(笑)

そんな自分にしてみれば、この作品における「音楽」が「目的」ではなくて「手段」だったことはとてもよかった。
音楽は大変だ、音楽は難しい、音楽に真剣になれ、そんな肩肘を張った話ではなくて、友達が集まる手段であり、仲間が奏でる空気を表現する手段だったことは、12話で、5人が次々と音を重ねていく場面に集約されてました。
音楽が目的ではなかったことが、この作品を80年代のスポ根ものではないものにしたのだろうけれど、しかし手段だったからこそ、この作品が現代らしい自由で優しい空気になったのだろうと思います。

きっとこの作品も過去になっていくんだろうけども、自分は多分きっと、これからも何度も見返すでしょう。ホントいい作品でした。

(20090627初稿 mixiより改訂して転載)

テーマ : けいおん!
ジャンル : アニメ・コミック

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