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何度目かの私的総括論:モキュメンタリーとしての「けいおん!」

2chを巡回していたら、某スレでけいおん!がどのように画期的であったかを論じてる下りがあったので、私論をぶっておきたくなったのでブログに書いておく
まあ、過去にもけいおんの総括論は何度か書いていて、それと重なる部分もあるけど、それはご容赦していただきたい
 
自分は「けいおん!」を10年に一度クラスの革命的作品だと思っている。ヤマト、ガンダム、エヴァといった革命的作品の系譜に連なるに値する作品と評価している。それはこの作品が従来のアニメにない画期的な技法、表現をアニメに持ち込んでいるからだ

自分は以前、この作品を90-00年代に乱造された萌えアニメのアンチテーゼでありオルタナティブであると評した
けいおん!という作品は確かに萌えアニメのオルタナティブである。それは間違いない。だが今は、アンチテーゼであるという部分は撤回しなければならない。なぜなら山田尚子監督の頭の中には、従来の萌えアニメなど最初から意識になかったことが今では様々なインタビューで語られ、また自分自身、そのようにこの作品を評価しなければならないと意識を改めたからだ。「けいおん!」は従来の萌えアニメの技法を踏襲して作られたものでも、萌えアニメのミームで作られたのではない。踏襲された技法は、おそらく実写映像、実写映画のものだ

端的に結論から言う
「けいおん!」の何が画期的なものであったか
それはこの作品がドキュメンタリズムに基づいたフェイク・ドキュメンタリー=モキュメンタリーの技法をキャラクターアニメに持ち込んだということだ

「けいおん!」が、キャラクターの記号化を否定して、実在する少女の記録映像的手法、つまりドキュメンタリー映像を意識した映像を作っていることは今更語るまでもない。ライターの藤津亮太氏はけいおんをリアル路線の延長にあるハイディティール作品と評していたが、それは表面的なものだ。リアリズムは、この作品がドキュメンタリーを意識した映像を作る上で必要な「手段」であって作品が目指している「目標」ではない。この作品が目指しているものはその二歩向こうにある
リアリティに基づいて描かれる彼女たちは、それでもあくまでアニメの創作人物なのだ。つまりドキュメンタリーに見えてドキュメンタリーではない、キャラクターの一挙一動一語の全てには、その影にクリエイターの創作性、作為がある。つまりその意味において本作はモキュメンタリーなのだ

だが、本作はモキュメンタリーの面白味を狙っているのではない。つまり、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」や「第九地区」といったモキュメンタリー映画、あるいはモキュメンタリーを意識した「SIREN」などのゲームのように、架空現実を作りそれを現実と混同させ、それを作品の魅力として見せようとしているのではない。「けいおん!」が追求しているのはあくまでアニメとしての映像でありドラマで、それを成し得たのは山田監督がいうところのキャラクターへの愛情ゆえであって、その意味では、けいおんがモキュメンタリーであることもおそらく結果に過ぎないのだろう

まとめると「けいおん!」は
00年代までの萌えアニメが陥ったキャラや物語の「記号化」を否定し
ガンダム以降追求されてきた「リアリズム」を手段として描いた
作為的創作物の生活を「ドキュメンタリー」として見せている
「フェイク・ドキュメンタリー」といえる


そしてここにこそ、この作品の器の大きさ、奥深さがある

「けいおん!」は、ドキュメンタリータッチの作品であるがゆえに、ただ美少女たちの日常風景を通じて青春を描いた萌えアニメとして流し見ることができる。しかし、それがフェイク・ドキュメンタリーであることを踏襲して見れば、クリエイターの真意をつかむためには、登場人物たちの一挙一動にクリエイターの狙いの存在を疑わねばならない。さりげない仕草、意味のないと思われる自然なセリフ、おこる出来事、挟まれるものや風景、それらすべては実在の人物のものではなく作為だからだ。つまり、万事においてそれがそうである理由があり、そこにはメタファーがある。そうしたクリエイターの仕掛けた作為を読解することを通じて、真の狙い、本当に伝えたい、見せたいテーマが浮かび上がってくる
恐ろしいことに、「けいおん!」はそういう作品の作りになっている

自分が記憶する限り、このような、誰でも楽しむことができるほど安易で、同時に読解は難解というアニメ作品を、自分は他に知らない
そしてだからこそ、この作品は模倣が困難なのだ
けいおんは確かに画期的な作品だが、ついにフォロワーは生まれないかもしれない。自分はその危惧を強く持っている…というより今はなかば諦めてもいる。アニメ業界に、この作品の手法を踏襲できる人は、やはり山田尚子しかいないのかもしれないと思っている

テーマ : けいおん!
ジャンル : アニメ・コミック

No title

コメントありがとうございます

>あっくんさん
けいおんはアニメというメディアで実写作品を撮っていると理解するのが一番近いように思いますね。一見、ドキュメンタリーを撮っているようで、そのキャラクターの演技にもちゃんと意図が込められているという、そういう作品なので、どこまでが作為なのかを見て行くと、すごい作品だとわかる作りになっていると思います

>あずにゃん530さん
自分ならここで使ってるモキュメンタリー性を中心に説明するでしょうね。見ていて面白いのはけいおんの作品世界が作為の世界でありながらドキュメンタリーのように、見ていてその一挙一動が楽しめること、それでいて作為的なドラマがあること、であろうと思います

No title

けいおん!の良さって何?
これはかつて、戦闘系アニメが好きな友人に聞かれた言葉です。
私は、この質問に返答することが出来ませんでした。
他のアニメにはない、このアニメにしかない、独特な感覚。
それを言葉にすることが出来ませんでした。

そして、このコメントを投稿するにあたっても、何回も書き直してしまいます。
この不思議な感覚を、字として、言葉として伝えることが出来ないのです。
「容易かつ難解」・・・これが、この不思議な気持ちの正体なのでしょうね。

No title

まさにおっしゃる通りだと思います。
けいおんを正しく理解するには、そもそもアニメって何?アニメにおけるリアリティって何?
ってところから始めないといけない気がします。

そのヒントの一つとして、映画のスタッフコメンタリーで山田監督と石原氏が話していた、
「ロンドンアイの回転速度を現実に近付けてしまうと、アニメでは逆にリアリティが損なわれる」、っていうことなんかが挙げられるように思いますね。

No title

コメントありがとうございます

>名無しさん
この作品は、初見の人がみても作品の主題を素直に受け取ることができるでしょうし、ファンが細かく見ていくとかなり精巧な仕掛けが積み重ねられているのがわかるという作りで、本当に懐が深いと思いますし、だからこそ大ヒット作になったんだろうと思います

>atomさん
武本さんらが「キャラクターが生きてるとはこういうことか」と感嘆した逸話がありますが、山田監督が腐心したのはまさにそこだろうと思うんですよね。自然さの中に作為を組み込むというか、作為を自然に見せるというか…
おっしゃるとおり、そのためにこの作品のギミックはさらっと見過ごされてしまう不幸があると思います。フェイクの出来がよすぎる。それだけに戦慄するわけですが…

No title

おっしゃる通り、フェイク・ドキュメンタリー作品であることも、生きたキャラクターをありのままに描く、ということを突き詰めていった結果なんでしょうね。

不自然さ、というのはフックですので、思わせぶりでいかにも寓意を含みそうなセリフや映像であればみんな注意して見て、あーだこーだ言いますが…
自然さを突き詰めた為に、この作品に込められた意味が見過ごされているのは、すこぶる不幸だと思いますね。

No title

誰でも楽しむことができるほど容易で、同時に読解は難解

何となく、わかる気がします
「軽くでも良いよー、けどハマればもっと面白いよー」
書いてて思わず唯の声で脳内再生されましたが、けいおんの懐の深さ・・・みたいな感じですかね?

No title

>ウーバーさん
コメントありがとうございます
同感です。本当にすごいことだと思いますし、幸運なことだと思います

山田監督は、唯たちの動き、アクションがいかに自然に見せるかに苦労したと、いくつかのインタビューで語っていますが、それはこの作品がフェイク・ドキュメンタリーだからというのが真意だと思うんです
つまりそれは 「監督自身に描きたいテーマがありキャラクターをその意図の通りに動かねばならないが、あくまでドキュメンタリーとして見せたいがゆえに、観客が知るキャラクターの行動原理に則ったキャラクター自身の行動として、そのアクションを自然に見せる」 ということだと思うわけです
こんな面倒くさい方法論でアニメを作るクリエイターは他にいないと思います。物語は、要素を単純化し記号化して作ったほうが楽に決まっていますし、実際殆どのアニメ作品がそういうもので、演出やセリフにクリエイターの意図が透けて見える易しい作りです。ですがけいおん!はその真逆に特化しています。流し見しているとその凄さに気が付かないほどに、洗練されています。キャラクターがあたかも生きていて、しかしその動きに作為がある、というのはもう信じられない作り込みです

この作品の凄みがもっと一般的な評価となっていくと良いと思います。また、フェイク・ドキュメンタリーチックなこの方法論をひとつのジャンルとして確立させるためには、フォロワー作品が必要なわけですが、やはり山田監督の次回作に期待するしかないだろうと思います

私たちって、けいおんをリアルタイムで見れたのって凄いことですよね
本当に出会えて良かった
こんな素晴らしい作品はまず現れないと思ってますしだからこそ、けいおんは語り継がれるべきです

実際ガンダム ヤマト エヴァ に継ぐアニメはけいおんしかないですよね

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